生活環境爽香空間

アロマと脳科学

アロマテラピーのしくみ

 アロマテラピーの主役である精油が心身に働きかける経路は二つあることを「特集|アロマの効能と用途」で学んだ。ひとつは嗅覚刺激、もうひとつは皮膚や粘膜を通して血流に乗り体内に入る経路である。しかし精油は数十から数百の揮発性有機物の混合物であり経口毒性があるなど、ひとつひとつの成分がどのように身体へ影響するのかを追跡するのは容易ではない。
 ここでは、精油の嗅覚刺激の仕組みとその効果について掘り下げてみる。

精油の嗅覚刺激のメカニズム

 蒸散した精油の芳香成分は鼻で感知され、嗅覚刺激として大脳辺縁系に到達する。ここで重要なのは、嗅覚をつかさどる部位が、脳の中でも本能的な部分である旧皮質に存在することである。脳は嗅覚刺激を受け取ると無意識のうちに情動を引き起こし、視床下部に影響を与える。視床下部は身体機能の調整を行う中枢であるため、匂いは本能的に身体諸器官の反応を引き起こす鍵となりうる。
精油の香りによって得られる安心感・快感・緊張感・覚醒感・瞑想感などにともなう情動が、心身のバランスを促すことが期待される。

脳科学

 ところで、脳科学は、ヒトを含む動物の脳とそれが生み出す機能について研究する学問分野で、神経科学の俗名であり、専門的な文献ではあまり使わない。以下に神経科学に関して記述するが、特に「脳科学」と呼ばれる物にはこれに当てはまらない疑似科学に類するものも多く含まれる。対象とする脳機能としては視覚認知、聴覚認知など感覚入力の処理に関するもの、記憶、学習、予測、思考、言語、問題解決など高次認知機能と呼ばれるもの、情動に関するものなどである。そもそもは認知神経科学と呼ばれる分野の一般向けの呼称の仕方であったが、最近は脳と心を結びつけて議論する研究全般がこう呼ばれるようになった。


認知神経科学

 認知神経科学(Cognitive neuroscience)とは認識の生物学的メカニズムを科学的に研究する学術分野で、心理プロセスとその行動面での表れ方の神経基盤に特に焦点を当てている。認知神経科学は、心理/認知的機能が神経回路によってどのように生み出されるかという疑問に答えようとする学問でもある。認知神経科学は心理学と神経科学の両方から生まれた分野で、認知心理学、心理生物学、神経生物学などの諸分野を統一する、またはそれらと重なり合う分野である。fMRIが誕生する以前は、認知神経科学は認知心理生理学と呼ばれていた。認知神経科学は実験心理学や神経生物学を背景に持ちながら、精神医学、神経学、物理学、言語学、数学からも広がっていく分野でもある。
 認知神経科学で用いられる手法として、精神物理学と認知心理学で用いられてきた実験パラダイムや、脳機能イメージング、神経系の電気生理学的研究手法があるが、最近では認知ゲノミクスや行動ゲノミクスといった手法も増えてきている。精神病理学における認知障害を持った患者の臨床研究は認知神経科学の重要な側面を構成している。主要な理論的アプローチとしては、計算論的神経科学や、より古くからは、心理検査のような記述的認知心理学の理論のようなものがある。

主な方法・下位分野

・電気生理学:動物においてパッチクランプ法、細胞内および細胞外電位記録法、ヒト・動物において、脳波、脳磁図、経頭蓋磁気刺激 (TMS) などを用いて神経細胞の興奮に関係する電気活動を、ミクロ・マクロのレベルで調べる。

・神経解剖学:神経細胞の内部構造、神経細胞間のつながり、細胞構造の動的変化などを光学顕微鏡、電子顕微鏡、凍結割断法、免疫染色その他を用いて調べる。

・分子生物学:遺伝子レベル、蛋白レベルで神経細胞の特性などを調べる。

・脳機能イメージング:脳活動をさまざまな装置を用いて可視化する方法。

・脳機能マッピング:脳の各部位がどういう働きをしているかを、まるで脳を地図に見立てたように"マッピング"していく方法。脳機能イメージングや損傷脳研究などの手法がある。

・動物の行動実験:サル、マウスなどの動物に、薬剤を投与したり遺伝子を操作するなどし、その行動を観察する。 心理学研究、精神物理学的研究:被験者となるヒトに様々な課題を行わせ行動を観察することで脳機能を類推する(例:視覚の干渉刺激実験)。

・理論的神経科学:神経の機能をコンピュータで再現したり、認知・学習などの理論的なモデルを作成することで研究を行うもの。計算論的神経科学など。

・神経経済学:行動経済学から派生した学問領域。ヒトの意志決定時における振る舞いと脳活動の関係を研究する分野。 以上のように様々な方法あるいは分野が存在し、それぞれに長所・短所がある。

 また、2つ以上の分野を組み合わせて行うこともある。例えば、Schultzら(1993年)の有名な実験では、サルに遅延反応課題をさせているときのドーパミン神経細胞の発火を細胞外電極で測定しているが、これは「計算論的神経科学+電気生理学」の組み合わせである。




臭覚

 それでは、臭覚と脳との関係を考えてみよう。嗅覚(きゅうかく)とは、化学物質を受容器で受け取ることで生じる感覚のことであり、陸上動物においては空気中の、水中動物においては水中の化学物質を感知している。ヒトにおいては鼻腔の奥にある嗅細胞により電気信号に変換し、脳でそれを認識する。いわゆる五感の1つ。なお嗅覚は、日本語では時に「臭覚(しゅうかく)」と言われることもある。一応「臭覚」も言葉としては存在し、同じ意味ではあるが、嗅覚が正しいとされている。

機構と歴史

 嗅覚の機構については嗅覚受容体の正体が明らかになる以前から4つの説が提唱されていた。

・振動説:分子から放出された電磁波あるいは分子の機械的振動で受容体を活性化する。
・化学説:分子が受容体と化学反応することで受容体を活性化する。
・酵素説:分子が補酵素として働き受容体酵素を活性化する。
・立体説:分子が受容体のポケットにきれいにはまると受容体を活性化する。

 1980年代以降、分子生物学的な手法の導入により嗅覚受容体の正体が明らかとなっていった。2004年のノーベル生理学・医学賞はリチャード・アクセル(Richard Axel)とリンダ・バック(Linda Buck)の嗅覚受容体の研究に対して与えられた。空気中の化学物質は鼻腔の天蓋、鼻中隔と上鼻甲介の間にある粘膜(嗅上皮)の嗅細胞によって感知される。この嗅細胞の細胞膜上には嗅覚受容体であるGタンパク共役受容体(GPCR)が存在し、これに分子が結合して感知される。受容体を活性化する分子が結合すると、嗅細胞のイオンチャネルが開き、脱分極して電気信号が発生する。この電気信号は嗅神経を伝わり、まず一次中枢である嗅球へと伝わる。さらにここから前梨状皮質、扁桃体、視床下部、大脳皮質嗅覚野(眼窩前頭皮質)などに伝わり、色々な情報処理をされて臭いとして認識される。




「におい」は直接、心を揺さぶる−杏林大学教授 古賀良彦

こだわりアカデミー@アットホーム

 1946年東京生れ。71年慶応義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科学教室入室。76年杏林大学医学部精神神経科学教室に転じ、90年に同大学助教授、95年に教授となる。医学博士。著書に『事象関連電位マニュアル−P300を中心に』(95年、篠原出版・共著)、『花からのメッセージ−心とからだすこやかに』(95年、法研・共著)など。

「におい」に着目した脳研究

 『におい』をとらえるのは嗅覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感はすべて脳でコントロールされている。例えば視覚は、主に新皮質と呼ばれる脳の中でも比較的、後に発達した部位で支配されている。人間はこの部位が発達しており、まず「これは花だ」と視覚が識別し、その後「きれいな花だ」と情緒的な判断が行なわれる。
 一方、嗅覚は、主に大脳辺縁系という部位で支配されている。これらは下等動物ほど発達している原始的な感覚といわれている。同時に大脳辺縁系は、情緒や欲動、記憶をコントロールしているため、『におい』を嗅いだ瞬間「いいにおい」、「嫌なにおい」というように、すぐさま感情に結びつく。
人がリラックスしている時の脳波にはα波が多く見られ、ある『におい』を嗅がせてα波が増えれば、その『におい』はリラックスさせる効果があると分ってきた。よく知られているものの中に、ラベンダーがあります。実験でラベンダーの『におい』を嗅がせてみると、ほとんどの人にα波の増加が認められた。この『におい』が好きなひとには、非常にリラクゼーション効果があるといえる。
 個人差はあるが、ジャスミンも同じ効果が認められた。また最近、ある化粧品メーカーから桃の『におい』が、どのような影響を与えるか調べてくれという要請があり、PETという装置で脳を流れる血液の量を測定する実験をしたところ、怒りを発現させる脳の扁桃体の血流量を減らして、イライラを抑えるという結果が得られた。


図 脳の各部位における血流量のにおい試料間の比較
脳の右側では、ウィスキーのにおいがある時が、エタノールのにおいがある時や、無臭(蒸留水)の時より、どの部位でも血流量が多い。


、『におい』にはリラックスし脳を活発化させる働きがある

 何らかの刺激が脳に入ってきた時、脳のシステムはその刺激ごとにさまざまな反応、機能を見せ、それぞれに応じた脳波が現れる。これを総称して「事象関連電位(じしょうかんれんでんい)」と呼ぶが、その中に刺激後、約0.3秒で現れる「P300」という脳波があり、すでに記憶している情報と、今脳に入ってきた情報が同じかどうか照合、判断する時などに出るんですが、この脳波の大きさが増すほど、脳が活発に活動していることを意味する。実際、実験で『におい』を嗅ぎながら色や音の区別をさせたところ、本人が好きな『におい』だと、P300の大きさが増えたという結果をえた。

事象関連電位 (event-related potential, ERP)

最近、ウイスキーの『におい』を使って脳の血流量を測る実験で、面白い結果を得ました。人にウイスキーのにおいを嗅がせたら、情緒感情と関係のある脳の右半球、特に快感をコントロールする中枢の部位の血流量が増え、中でもウイスキー好きな人はより効果が見られた。流れる血が増えるというのは、その部位の働きが活発化していることを示めすので、ウイスキーの『におい』が心地よさを与えていることを意味している。 これは、アルコールが作用しているわけではない。断然ウイスキーの方が血流量が増えており、熟成したウイスキーの『におい』がもたらしていることは明白になった。

痛みの緩和に「におい」が役に立つ

 近年、脳波や血流量の測定技術により、人を使った実験ができるようになったばかりです。これからさらに実験を重ね、本当に「『におい』が心に効く」ということを立証し、精神科の治療法として医療に活用したい。現在も、「アロマテラピー」というものがあるが、これは植物の『におい』の人間に及ぼす影響に注目し、それを心と体の健康増進に積極活用しようという民間療法で、医学的治療ではない
 今のところ、心身症の治療に有効だろう。この病気は、心の疲れが自律神経の緊張を高め、ストレスがたまってしまい、その結果、体の状態が不調になってしまう病気だが、原因である神経の緊張を取り除くのに精神安定剤を使用していますが、それに『におい』を代用できるのではないかと考えている。

ラベンダーのにおいがα波を増やす効果、無臭(蒸留水)の時と比較し、ラベンダーのにおいがあるとアルファ波(赤や茶色の部分)の出現量が特に後頭部で増加する。

図 脳の構造 辺縁系は前頭葉の底面に位置する。(The New Grolier Multimedia Encyclopedia CD-ROMより一部改変し引用)

 精神安定剤には、副作用や依存の問題もあり、『におい』に期待できるところがある。それ以外に、痛みの緩和に利用できないかとも考えている。つまり、スポーツでケガなどをしても、試合に勝っている時は何ともないが、負けた瞬間にどっと痛くなるということがある。勝っている時の快感と同じような気分を『におい』で再現すれば、痛みを全部取り除くに至らないまでも、軽くできるのではない。人によって効果のある『におい』が違うので、それを見つけて、薬のように処方できるようにできないか。病気の治療や薬の代りとして、はたまた「ちょっと一服」というような感覚で、自分に合った『におい』を日常的に使う時代が来るかもしれない。



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