火災・環境災害・複合災害

環境災害とは

環境災害の定義と分類

 一般に災害発生の素因(契機となった要因)が自然現象の場合を自然災害、人為的要因が契機となった場合を社会災害と呼ばれます。災害対策基本法では、災害を「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生する被害をいう」と定義しています。異常な自然現象を原因とする被害を自然災害、大規模な火災、爆発等の人為的要因を発端(起因)とする被害を社会災害と考えことができます。.

  「環境災害」は、これら自然災害や社会災害に伴って、生態系に大きな影響をもたらすようなインパクト(衝撃)ととらえられます。「産業革命以降に人類が急速に工業生産、農業生産を拡大して、人間活動が高度化、大規模化、広域化することに伴い、その副作用として、時として予想もしない大きな災害をもたらすが、こうした事例が蓄積されて新たな災害として認識されるようになったもの」と定義しています。
 こうした環境災害は、その影響範囲と影響期間、さらには、その原因によって分類することができます。影響範囲は、主に水圏(河川・湖沼・海洋(内湾・沿岸・外洋)、地圏(土壌・地下水)、気圏(大気)に分けられ、影響期間は、短期(数年程度)、中・長期(数10年以上)に、さらに原因として、化学工場爆発(イタリア・セベソ,インド・ボパール,スイス・サンドス(ライン川)、中国・古林省(アムール川:黒竜江),原油流出事故(工クソンバルディーズ号(アラスカ沖)、ナホトカ号(日本海)、BP社ディープウオーター・ホライズン(メキシコ湾)、鉱滓ダム決壊(ルーマニア、ハンガリー)、原発事故(チェルノブイリ、東京電力福島第一)、工場・鉱山排水(水銀、鉛、カドミウム、六価クロムなどの重金属汚染)などのほか、河川や湖沼の富栄養化や地球温暖化・酸性雨などが該当します。これらのうち、影響範囲および影響期間に着目して複式的に分類したものを上図に示しました。影響範囲・期間に着目した環境災害の分類、範囲や影響期間は、河川や大気などのように流動に伴う交換の速いものから、湖沼や地盤・地下水などのように交換の遅いものによって大きく変化します。

 環境災害の中では、化学工業における重大な事故が世界中で発生し続けています。欧州では1976年のセベソ事故(イタリアにおける殺虫剤や除草剤を製造する化学工場の爆発事故)を受けて、類似事故の防止ならびに制御を目的として、セベソ指令が1982年に制定されました。正式には「一定の産業活動に伴う重大事故危険に関する欧州閣僚理事会指令」と呼ばれ、有害化学物質を取り扱う施設に対して、事故の防止と被害拡大抑止策の策定を求めたものであり、有害物質の敷地外への流出に関しては環境保護関連指令としての側面をもっています。
 セベソ指令の制定後も,1984年のインドのボパールでのユニオン・カーバイド社の爆発事故や、1986年のスイスのバーゼルにおけるサンドス社の火災事故によるライン川への有害化学物質の流出事故などの重大事故が相次いだことから、セベソ指令は改定され、対象を危険物質の製造だけでなく貯蔵にも広げるなどの適用範囲の拡大されました。
 その後も、EUの環境問題に関するアクションプログラムなどとの関連でセベソ指令は、全面的な見直しが行われ、1996年に制定された「重大事故危険の管理に関する欧州閣僚理事会指令」に置き換えられることになりました。この1996年のEU指令は、通称「セベソH指令」と呼ばれています。指令の規制対象を安全管理システムや危機管理、土地使用計画等に広げているのが特徴です。その目的は、重大事故の予防だけでなく事故発生を想定して、危険の極小化を図っています。また、蓄積性の有害物質による後発障害も対象にしいます。対象施設は、化学物質の製造工程等だけでなく、貯蔵についても対象としています。

チェルノブイリ原子力発電所事故     チェルノブイリ原発事故

  一方、原子力発電所の事故もきわめて大きな社会的な影響をもたらす.1986年チェルノブイリ原発事故では広域の土壌汚染が生じました。2011年3月の東京電力福島第一原発事故では、広域の土壌汚染に加え、汚染水の海洋流出に伴う海洋生態系への影響が懸念されます。なお、福島第一原発事故は,東日本大震災に伴う津波によって原子炉の冷却機能が喪失されたもので、高度の安全管理がなされていた原子力発電所の安全対策が自然災害によって破壊された複合災害ともとらえられます。
  これら環境災害のうち,代表的な事例(水環境災害を除く)を以下に示します。.

1976年イタリア・セベソ農薬工場爆発事故

   1976年7月にイタリアのロンバルディア州、ミラノの北25 km付近に位置するセベソの農薬工場で、トリクロロフェノール製造中に爆発事故が発生し、ダイオキシン(主に2,3,7,8-TCDD)等が30〜130k9の間で住宅地区を含む1,800haに飛散し、周辺の住民、動物、作物、土地が高濃度のダイオキシンに曝露した.この事故による直接の死亡例はないが、事故後数か月間に住民の一部がクロルアクネ(塩素描癒)を発症した。また、事故後数日以内に3,000匹以上の動物(主に家禽やうさぎ)が死にさらに食物網に入るのを防ぐために約8万匹の動物が処分されました。高汚染地区は居住禁止・強制疎開などの措置が取られ,この事故を教訓として、ECは化学工場の安全規制を定めたセベソ指令を定められました。

1984年インド・ボパール漏出事故

Bhopal Disaster Spurs U.S. Industry, Legislative Action

 1984年12月にインドのマッディヤ・プラデーシュ州の州都ボパールで操業していたユニオン・カーバイド社の子会社の化学工場のタンクの安全弁が破裂し、約30トンのイソシアン酸メチル(MIC)が流出・拡散した.肺や目を冒す有毒ガスは工場周辺の町に流れ出し、工場の近隣市街がスラムという人□密集地域であったこと、また事件当夜の大気に逆転層が生じて有毒ガスは拡散せす滞留したために、夜明けまでに2,800人以上が死亡、20万人以上が被害を受けた.その後数か月で新たに1,500人以上が死亡するなど被害は拡大し続け、最終的には様々な要因で1万5干〜2万5千人が死亡しました。.

1986年チェルノブイリ原発事故

  1986年4月26日にソビエト連邦(現:ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた原子力事故で、後に決められた国際原子力事象 評価尺度(INES)において最悪のレベルフ(深刻な事故)の参考事例として知られています。4号炉は炉心溶融(メルトダウン)ののち爆発し,放射性降 下物がウクライナ・白ロシア(ベラルーシ)・ロシアなどを汚染した。事故後のソ連政府の対応の遅れもあいまって被害が拡大・広範化し、史上最悪の原 子力事故となり、.30人が直後に死亡し,原発から半径30 km以内の高汚染地域の13万5千人以上の住民が避難を余儀なくされました。この地域は現在 もなお居住が禁止されるとともに原発から北東へ向かって約350kmの範囲内にはホットスポットとよばれる局地的な高濃度汚染地域が約100か所にわたって点在し、ホットスポット内では農業や畜産業が全面的に禁止されています。特に、放射性ヨウ素に伴う甲状腺がんが子供達に顕著に発生し、2,500人以上が死亡したとされています。

1999年首都高速道路におけるタンク爆発事故

 1999年10月に首都高速道路で過酸化水素積載車両のタンクが爆発し、衝撃で防音壁が壊れて下の通りに落下し、通行人ら20人以上が負傷しました。

2000年オランダ・エンスヘデ花火工場爆発事故

 2000年5月に100トンの花火を保管していたエ場倉庫が爆発し、消防士を含む20人以上が死亡し.、500人以上が負傷するとともに多くの住宅が破壊 され、近隣住民の多くは花火工場の存在を知らされていなかったという。.

2001年フランス・トゥールーズ化学工場爆発事故

 2001年9月に200〜300トンの硝酸アンモニウムが保管されている化学肥料工場の倉庫で大爆発が起こり、周辺住民を含む約30人が死亡,約2,500 人が負傷しました。

2003年中国・重慶天然ガス田のガス噴出事故

 2003年12月に天然ガス田のガス噴出事故で、硫化水素を含む大量のガスが噴出し、約240人が死亡,9,000人以上が入院,約6,4000人が避難しました。

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異常気象と温暖化

異常気象とは

  地球温暖化に伴い,気候が近年大きく変わりつつあることが認識され始めている。このことは、地球全体の平均気温が毎年のように過去最高を記録し続けている事実や、最近、世界各地で発生する異常気象の出現頻度、およびその規模や分布が、20世紀前半におけるそれよりも明らかに異なるという事実からもうかがい知ることができます。例えば、数千年に一度の発生確率ともいわれる2003年夏のヨーロッパの熱波、同じく、2003年夏の日本付近における10年ぶりの冷夏、2004年に記録した年間10個もの台風の日本襲来や60年ぶりともいわれる2005年12月の西日本における大寒波。さらには、1898年の統計開始以来113年間で平均気温が最高を記録した2010年夏の日本の猛暑など、近年世界各地で顕著な異常気象が発生していることは、記憶に新しいことです。
 残念ながら、これら異常気象の発生と地球温暖化との詳細な因果関係は現在のところ未解明であり、今後集中して取り組むべき気象学・気候学の大きな問題です。ここでは、まず、異常気象と気候変動の違いを明確にした後、中高緯度域における異常気象の主要因であるブロッキングが説明される。
 まず、異常気象は、「ある地点における月平均気温や月積算降水量の、長年の平均値として定義される気候値(平年値)からの差(偏差)がきわめて大 きく、30年に一度程度発生する現象」として定量的に定義されている,月平均気温などの気象要素の頻度分布は、一般に平年値からの偏差が大きくなる と、その出現確率が小さくなる正規分布となることが知られています(下図参照)。

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 この正規分布を仮定した場合、偏差の大きさがその標準偏差の約2倍を越える確率は、正偏差と負偏差の両方を加えると約3%程度となり、これは,異常気象の基準である約30年に一度の出現頻度と対応します。すなわち、偏差の大きさが標準偏差の2倍以上の場合に異常気象と判断できます。いずれにしても、月平均気温などの気象統計量が正規分布をとる場合には、必ず30年に一度の確率で異常気象は出現します。したがって、異常気象の発生自体は「異常」ではなく、むしろ「正常」であることに注意すべきです。逆にいうと、異常気象が発生しない場合や、その発生頻度が変化する場合こそが 「異常」であり、それは気象統計量の分布がそれまでの正規分布からすれていることを意味しています。
 このズレは、気候値あるいは標準偏差の変化と対応するため,異常気象の発生頻度の変化は気候変動ととらえることがききます。

異常気象と温暖化

 では,地球温暖化などの気候変動が生じた場合、異常気象の発生頻度はどのように変化すると予期されるのであろうか? 上図に、いくつかの異な るタイプの気候変動が生じた場合における異常気象の発生頻度の変化を、月平均気温を例にとって示す。まず気候変動が平均の増加のみに現れる場合(上図左)には、異常高温の発生頻度が増え、異常低温の発生頻度が減り、平均は変化しないが、変動が大きくなる場合(図中)、異常高温と異常低 温いずれの発生頻度も増加しています。最後に両方の気候変動が同時に生じた場合、すなわち平均値も変動も大きくなる場合(図右)には、異常高温の 発生頻度は非常に大きくなり、異常低温の出現頻度も極端に減りません。
 地球温暖化に伴って、ほぼ全ての地点で平均気温が上昇する傾向は間違いないが(図左)、偏差が大きくなる(図右)かどうかを見きわめるのは、現時点ではきわめて難し。また、月積算降水量のようなほかの気象要素では、変動の仕方が変わる可能性も十分あります。

ブロッキング

 中高緯度域における異常気象の発生は、大気循環パターンの変動と密接に関連しています。例えば、中高緯度域において、偏西風が強く移動性高低気圧が卓越するときには、異常気象が発生する可能性が低く、移動性高低気圧に伴って天気が西から東へと周期的に変化していくためである.ところが、 偏西風ジェット気流が南北に蛇行、,移動性高低気圧の活動が弱まると、ある地域では一定の天候状態が持続するため、異常気象が発生する可能性が高まります。異常気象の発現メカニズムを理解するためには,移動性高低気圧よりも長い時間スケールをもつ大気循環変動に着目する必要があります。
 ブロッキング(Blockin)は、中高緯度域における異常気象を引き起こす原因となります。このような長周期の大気循環変動の代表的な形態の1つで、以下のように持続的で地理的に固定した大気循環パターンとして特徴付けられます。(i)ブロッキングが出現すると、中高緯度の対流闇中上層を、通常はほぼ東西に流れる偏西風(下図(b))が、一週間程度以上にわたり、南北に大きく蛇行、あるいは分流する(図(a)).(A)偏西風が北に蛇行する領域の東側には、ブロッキング高気圧とよばれます。
 対流圏全層にわたる背の高い鉛直構造をもつ暖かい高気圧が発達する(図(a))で、モスクワ上空に存在する高気圧)、(B)ブロッキング高気圧は、その西側で、移動性高低気圧の東進を妨げます。.(iv)南北に高低気圧が並ぶ「双極子」(ダイポール)型ブロッキングと、高気圧だけが存在するΩ型ブロッキングが存在します(図(a)はΩ型ブロッキング)。

 このようなブロッキングは,時には1か月以上も持続し、その影響を受ける地域では同じような天候が長期間持続するため、中高緯度域で発生する異常気象の主要な原因となります。例えば、図(a)で示された2010年7月には、ブロッキング高気圧が発達したモスクワでは、日最高気温が平年よりも15℃以上も高い38℃に達し、乾燥した高温の空気により大規模な山火事が発生した.また,このブロッキングの東側のパキスタンでは、極域の寒冷な大気が南下したため大洪水となりました。さらに2003年夏のヨーロッパでの異常高温や、2003年夏の日本での冷夏も、それぞれヨーロッパとオホーツク海上空でブロッキングが発達したことが原因です。
 ブロッキングの維持形成には、移動性高低気圧や準停滞性波動が重要な役割を果たしていることが知られていますが、その詳細については解明すべき点が多く、さらにブロッキングの形成を予測することは難しく、その予測は中長期予報の精度向上の鍵となっています。


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