507 特許特許研究室再生医療

みずほ情報総研 : 日本における再生医療産業化の課題と画像解析技術(1/2)

作成日:2018.04.29|改訂日:

特集|最新再生医療技術


再生医学( Regenerative medicine)とは、人体の組織が欠損した場合に体が持っている自己修復力を上手く引き出して、その機能を回復させる医学分野である。この分野における医療行為としては再生医療とも呼ばれる。
再生医学を行う手法として、クローン作製、臓器培養、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)の利用、自己組織誘導の研究などがある。将来的には遺伝子操作をした豚などの体内で人間の臓器を養殖するという手法も考えられている。自己組織誘導については、細胞と、分化あるいは誘導因子(シグナル分子)と、足場の3つを巧みに組み合わせることによって、組織再生が可能になるとみられており、従来の材料による機能の回復(工学技術に基づく人工臓器)には困難が多く限界があること、臓器移植医療が移植適合性などの困難を抱えていることから、再生医学には大きな期待が寄せられている。
胚性幹細胞(ES細胞)の作成には受精卵を用いるといった倫理的な問題も伴うことから、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らによる人工多能性幹細胞(iPS細胞)の研究成果が、ノーベル生理学・医学賞を受賞したことなどから世界から注目されている。細胞や細胞医薬品の長期保存のため液体窒素を活用した大型の全自動凍結保存システムなども注目される。

再生医療 臨床ラッシュ 週刊エコノミスト編集部

問題

再生医療は、未確立な医療技術であるが故、実施に当たっては十分な説明が必要とされる。例として、体の痺れを訴え、東京都渋谷区のさくらクリニックで診察を受けた兵庫県内の女性が、担当医師から「細胞治療(英語版)で症状が改善する可能性がある」と説明を受け、女性は脂肪幹細胞から調剤した製剤の点滴を受けたものの、症状は逆に悪化。女性は慰謝料などを求め、東京地方裁判所に提訴。2015年5月15日に同地裁は、「未確立な治療技術である再生医療に当たって十分な説明がなされて折らず、治療方法の選択決定権を侵害した」などとして、同クリニックの院長らに対し184万円の支払いを命じた。
今回は最新の再生医療技術を事例掲載する。

  


特開2018-065132 金属製多孔膜、それを用いた分級方法、および分級装置

概要

近年、フィルタを用いた細胞凝集塊の分級において、細胞凝集塊の回収率を高めることが望まれている。本発明は、細胞凝集塊の回収率を高めることができる金属製多孔膜、それを用いた分級方法および分級装置を提供することを目的とする。下図1のごとく細胞凝集塊を分級する金属製多孔膜10であって、前記細胞凝集塊が捕捉される第1主面PS1と、第1主面PS1に対向する第2主面PS2とを有すると共に、第1主面PS1と第2主面PS2とを連通する複数の貫通孔12を有する膜部11を備える金属製多孔膜10。このような構成により、細胞凝集塊の回収率を高めることができる金属製多孔膜10で、細胞凝集塊の回収率を高めることができる金属製多孔膜、それを用いた分級方法及び分級装置の提供。

図1、2、3図4、5図表1

【符号の説明】
10、10A、10B、10C 金属製多孔膜 11、11a、11b、11c 膜部 12、12a、12b、12c 貫通孔 20 ハウジング 21 第1ハウジング部 21a 流体流入路 21b フランジ部 21c 貫通穴 21d 末端部 22 第2ハウジング部 22a 流体排出路 22b フランジ部 22c 凸部 22d 末端部 50 分級装置 60、60A、60B、60C 液体 61、61a、61b、61c、61d 細胞凝集塊 62 単離細胞 63、64、65 細胞凝集塊 66 細胞 70 液体の流れる方向 80 ウェルプレート PS1 第1主面 PS2 第2主面


特許請求範囲

    1. 第1主面と、前記第1主面に対向する第2主面とを有すると共に、前記第1主面と前記第2主面とを連通する複数の貫通孔を有する膜部を備える金属製多孔膜を準備するステップ、細胞凝集塊を含む液体を前記金属製多孔膜に通過させ、前記細胞凝集塊を前記金属製多孔膜に捕捉することによって、前記細胞凝集塊を分級するステップ、 前記金属製多孔膜に捕捉された細胞凝集塊を凝集するステップ、を含む細胞凝集塊の作製方法
    2. 前記細胞凝集塊を凝集するステップは、第1細胞凝集塊を作製する第1凝集ステップと、前記第1細胞凝集塊より大きさが大きい第2細胞凝集塊を作製する第2凝集ステップとを含む、請求項1に記載の細胞凝集塊の作製方法。
    3. 前記金属製多孔膜を準備するステップは、第1金属製多孔膜と、第1金属製多孔膜の貫通孔の寸法より大きい複数の貫通孔を有する第2金属製多孔膜と、を準備し、 前記第1凝集ステップは、前記第1金属製多孔膜で捕捉された細胞凝集塊を凝集することによって前記第1細胞凝集塊を作製し、 前記第2凝集ステップは、前記第2金属製多孔膜で捕捉された細胞凝集塊を凝集することによって前記第2細胞凝集塊を作製する、 請求項2に記載の細胞凝集塊の作製方法。
    4. 細胞凝集塊を分級するための金属製多孔膜を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞凝集塊の作製方法を実施するためのキット。



特開2018-064578 細胞において多能性を誘導する方法

要約

細胞を、MUC1活性を増大させる遺伝子、タンパク質又は化学種と接触させることによって細胞において多能性を誘導又は維持する方法であって、タンパク質は、好ましくはMUC1*リガンドであり、リガンドは好ましくはNM23であり、タンパク質は抗体、好ましくはMUC1*のPSMGFR配列を特異的に認識する二価抗体であってもよい方法。MUC1*とは、細胞外ドメインがPSMGFRを含むようにN末端が切断されたMUC1タンパク質を指すことで、単独で、又は既に同定されたものに加えて、細胞において多能性を誘導するか、又は多能性誘導の効率を向上させるタンパク質及び小分子の提供。

図1

特許請求範囲

    1. 体細胞において多能性を誘導する方法であって、前記細胞を、MUC1の二量体化を増加させることによりMUC1*活性を増大させる二価抗MUC1抗体又はNM23と接触させることを含むものであり、MUC1は細胞外ドメインがPSMGFR(配列番号5)を含むようにN末端が切断されたMUC1タンパク質である、方法。





特開2018-061511 神経細胞評価方法、神経細胞評価プログラム及び神経細胞評価方法

概要

iPS細胞の作成(特許文献1参照)により、再生医療、組織工学、細胞工学等の分野の進歩は著しく、細胞の状態の評価や、細胞に対する薬物等の効果や影響の評価に対する要望が非常に大きくなっている。特に神経細胞においても、iPS細胞等の胚性幹細胞から神経細胞を作製する方法が確立されてきており(特許文献2参照)、神経細胞の有効な分析方法が求められている。
細胞の分析方法として、分析対象の細胞を経時的に撮像した動画を解析し、そこから得られる情報に基づいて細胞の分析を行う方法が研究されている。例えば特許文献3には、細胞を含む動画において動きベクトルを検出し、動画に含まれる細胞の動きの協同性を評価する画像処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2011−188860号公報
【特許文献2】特開2006−525210号公報
【特許文献3】特開2012−105631号公報
しかしながら、特許文献3に記載の画像処理装置は、動画からひとつの評価値を算出するものであり、動画における細胞の経時的な動きを評価するものではない。本発明者らは、細胞等の分析対象が経時的に撮像された動画像において、分析対象の経時的な動きを評価することが可能な分析手法を新たに見出した。以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、分析対象を経時的に撮像した動画像から分析対象の経時的な動きを評価することが可能な分析システム、分析プログラム及び分析方法を提供することにある。
下図12のように、神経細胞評価プログラム及び神経細胞評価方法を提供することことで、特徴量算出部と、特徴量表示部とを具備する。特徴量算出部は、神経細胞を経時的に撮像した動画像において、神経細胞の評価対象範囲の動き量の周波数特徴量を算出する。特徴量表示部は、算出された神経細胞の評価対象範囲の周波数特徴量の薬剤投与前後での変化を可視化して表示するよう制御するkとで、分析対象が経時的に撮像された分析対象動画像から分析対象の経時的な動きを評価することが可能な分析システム、分析プログラム及び分析方法を提供することが可能である

図12

実施するための形態

第1の実施形態

図1,2図1は、本実施形態に係る分析システム100の構成を示す模式図であり、図2は分析システム100の動作を示すフローチャートであるである。図1に示すように分析システム100は、動画像取得部101、動き量検出部102、範囲指定部103、特徴量算出部104及び特徴量表示部105を有する。分析システム100は、情報処理装置によって実現される機能的構成とすることができ、単一の情報処理装置によって実現されてもよく、ネットワークを介して接続された複数の情報処理装置によって実現されてもよい。
動画像取得部101は、「分析対象動画像」を取得する。分析対象動画像は、分析対象の細胞や細胞群を経時的に撮像した動画像であり、動画像は連続的に撮像された複数のフレームから構成される動画や、タイムラプス撮影により撮像された静止画を含む。分析対象動画像の撮像速度は分析対象に応じて適宜設定することが可能であり、分析対象が神経細胞の場合は50fps(frame/sec)以下、例えば1fpm(frame/min)とすることができる。分析対象が心筋細胞の場合は150fps以上とすることができる。
分析対象動画像は、明視野撮像、暗視野撮像、位相差撮像、蛍光撮像、共焦点撮像、多光子励起蛍光撮像、吸収光撮像、乱光撮像等の各種の光学的な撮像方法を利用して撮像された動画像であるものとすることができる。
図3,4図3は、分析対象動画像の例であり、複数の神経細胞を含む動画像である。動画像取得部101は、図示しない撮像装置(顕微鏡撮像装置)から分析対象動画像を取得してもよく、ストレージに格納されている動画像やネットワークから供給された動画像を分析対象動画像として取得するものとすることも可能である。この際、動画像取得部101は、予め撮像された動画像から、分析対象の種類に応じて所定の周期でサンプリングし、分析対象動画像を取得してもよい。動画像取得部101は、取得した分析対象動画像を動き量検出部102に供給する。
動き量検出部102は、分析対象動画像における「動き量」(動きベクトル)を検出する(図2、St101)。動き量は、分析対象動画像を構成するフレーム間において、対応する各画素又は画素群の時間に伴なう移動量及び移動方向を含み、ブロックマッチング等の画像処理手法によって検出することが可能である。動き量検出部102は、検出した動き量を範囲指定部103に供給する。
範囲指定部103は、分析対象動画像において「算出範囲」を指定する。算出範囲は、分析対象動画像において後述する特徴量を算出するための範囲であり、一つ又は複数の範囲とすることができる。図4は分析対象動画像において指定された算出範囲の例を示し、白線で区画された各範囲が算出範囲である。
範囲指定部103は、ユーザによって指示された範囲を算出範囲として指定してもよく、予め定められた範囲を算出範囲として指定してもよい。予め定められた範囲は、例えば、図4に示すように分析対象動画像を多分割(例えば10×10)した範囲とすることができる。また、範囲指定部103は、分析対象動画像の全体を一つの算出範囲として指定してもよい。範囲指定部103は、算出範囲と算出範囲毎の動き量を特徴量算出部104に供給する。
特徴量算出部104は、算出範囲毎に「特徴量」を算出する。(図2、St102)。特徴量は、分析対象動画像における時間範囲毎の動き量の特徴を示す量である。この時間範囲は、一定の時間範囲であってもよく、可変の時間範囲であってもよい。具体的には特徴量算出部104は、算出範囲毎の動き量から、動き量の時間変動である時間−動き量波形を算出する。図5.6図5は時間−動き量波形の例であり、横軸(frame)は分析対象動画像のフレーム、即ち撮像時間を示し、縦軸(motion)は動き量を示す。
特徴量算出部104は、時間−動き量波形を利用して特徴量を算出する。具体的には特徴量は、拍動エリア(細胞の存在する面積)、動き量の平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散又は変動係数等を含む。特徴量算出部104は、時間−動き量波形において特徴量を算出する時間範囲を移動させながら、特徴量を連続的に算出する。特徴量を算出する時間範囲は、特徴量の種類や分析対象の動き等に応じて適宜設定することが可能である。
さらに、特徴量は、「周波数特徴量」を含む。特徴量算出部104は、時間−動き量波形に対して周波数解析を施すことにより周波数特徴量を算出することが可能である。図6は、特徴量算出部104による周波数特徴量の算出方法を示す図である。特徴量算出部104は予め、DC(直流)成分の除去やフィッティング等の前処理を行った上で、図6に示すように、時間−動き量波形に対して時間窓(window)を設定する。
特徴量算出部104は、時間窓を移動させながら、時間窓に含まれる波形に対して高速フーリエ変換(FFT)解析を行い(図2、St103)、得られた結果からパワースペクトル密度(power spectral density:PSD)を算出する。図7図7に、パワースペクトル密度の例を示す。
特徴量算出部104は、周波数解析によって得られる平均強度、ピーク周波数又は平均パワー周波数(MPF:mean power frequency)等を周波数特徴量として算出することができる(図2、St104)。周波数解析には高速フーリエ変換(FFT)、ウェーブレット変換、最大エントロピー法(MEM)等の各種周波数解析手法が含まれる。なお、MPFは、パワースペクトル密度において面積比が等しくなる周波数である。図6に、面積Aと面積Bが等しくなるMPFを示す。特徴量算出部104は、算出した特徴量を特徴量表示部105に供給する。なお、特徴量算出部104は同一の時間範囲から複数種の特徴量を算出してもよい。
図8 特徴量表示部105は、特徴量の時間変化又は空間変化を可視化する。具体的には特徴量表示部105は、特徴量を可視化して分析対象動画像に重畳させ、特徴量表示動画像を生成する(図2、St105)ことができる。図8は、特徴量表示動画像の生成方法を示す模式図である。特徴量表示部105は、特徴量の値の大小に応じて色彩を付し、あるいは濃淡を付し、特徴量が算出された算出範囲に対応させて配置することによって特徴量を可視化することができる。特徴量表示部105は、上記可視化された特徴量を、分析対象動画像において特徴量が算出された時間範囲に対応するフレームに重畳させ、特徴量表示動画像を生成する。
図8に示す特徴量表示動画像は、分析対象動画像を100分割した算出範囲(図4参照)からMPFを算出し、分析対象動画像に重畳させた例である。特徴量表示部105は生成した特徴量表示動画像をディスプレイに供給し、表示させるものとすることができる。これにより、ユーザは特徴量によって表される動き量の特徴を参照しながら分析対象動画像を観察することが可能となる。
特徴量表示部105は、MPF以外にも各種の特徴量を分析対象動画像に重畳させ、特徴量表示動画像を生成することができる。図9は、各種の特徴量を分析対象動画像に重畳させた特徴量表示動画像の例である。図9(a)は動き量平均、図9(b)は動き量分散値、図9(c)はMPF(周波数)がそれぞれ重畳された特徴量である。これらの図に示すように、特徴量の種類によって観察できる特徴が異なり、例えば動き量分散値は細胞突起付近で大きく、周波数成分は細胞体で周波数が低い等の特徴を観察することが可能となる。
また、特徴量表示部105は、上述した時間窓毎の周波数特性を表示させ、特徴量の空間変化を可視化してもよい(図2、St106)。図10は、時間窓毎の周波数特性の例である。10(a)はGABAが投与されたiPS由来の神経細胞の周波数特性であり、図10(b)はグルタミン酸が投与された同神経細胞の周波数特性である。 GABAは神経細胞に抑制性の刺激を与える生理活性物質であり、投与された神経細胞は、低周波数の動き(振動)を生じる。グルタミン酸は神経細胞に興奮性の刺激を与える生理活性物質であり、投与された神経細胞は、高周波数の動きを生じる。図10(a)に示す周波数特性では、低周波数の動きが活発化しており、GABAによる神経細胞への影響が検出できることがわかる。

図9,10

GABAは神経細胞に抑制性の刺激を与える生理活性物質であり、投与された神経細胞は、低周波数の動き(振動)を生じる。グルタミン酸は神経細胞に興奮性の刺激を与える生理活性物質であり、投与された神経細胞は、高周波数の動きを生じる。図10(a)に示す周波数特性では、低周波数の動きが活発化しており、GABAによる神経細胞への影響が検出できることがわかる。
さらに特徴量表示部105は、特徴量算出部104によって算出された特徴量を表やグラフとして表示してもよい(図2、St107)。図11は、特徴量を示す表の例である。同図に示すように、特徴表11量の表やグラフが表示されることによって、ユーザは特徴量の値や傾向を把握しやすくなる。
本実施形態に係る分析システム100は以上のように構成される。分析システム100によれば、特徴量を利用して分析対象動画像における分析対象の動きを評価することが可能である。具体的には分析システム100は、生理活性物質の効果の評価、薬剤の効果、毒性の評価、神経細胞の品質管理、神経細胞の分化状態の評価、異常細胞やネットワーク異常の領域の特定、病態由来の細胞の評価による病態の評価等に利用することが可能である。
分析システム100の分析対象は特に限定されない。しかしながら、分析システム100の分析対象として神経細胞が好適である。神経細胞の動き(振動等)は、神経細胞に印加されている刺激の種類(抑制性や興奮性等)や神経細胞ネットワークの形成状態によって影響を受ける。しかしその動きは心筋細胞の拍動等と比較して微小であり、より精度の高い分析が要求される。分析システム100は、特徴量を指標として細胞の動きを高精度に分析することが可能であるため、神経細胞は本分析システムによる分析対象として好適である。




第2の実施形態

図12図12は、本実施形態に係る分析システム200の構成を示す模式図であり、図13は分析システム200の動作を示すフローチャートであるである。図12に示すように分析システム200は、動画像取得部201、分析対象領域特定部202、動き量検出部203、特徴量算出部204及び特徴量表示部205を有する。分析システム200は、情報処理装置によって実現される機能的構成とすることができ、単一の情報処理装置によって実現されてもよく、ネットワークを介して接続された複数の情報処理装置によって実現されてもよい。
動画像取得部201は、「分析対象動画像」を取得する。分析対象動画像は、分析対象の細胞や細胞群を経時的に撮像した動画像であり、動画像は連続的に撮像された複数のフレームから構成される動画や、タイムラプス撮影により撮像された静止画を含む。分析対象動画像の撮像速度は分析対象に応じて適宜設定することが可能であり、分析対象が神経細胞の場合は50fps(frame/sec)以下、例えば1fpm(frame/min)とすることができる。分析対象が心筋細胞の場合は150fps以上とすることができる。
分析対象動画像は、明視野撮像、暗視野撮像、位相差撮像、蛍光撮像、共焦点撮像、多光子励起蛍光撮像、吸収光撮像、乱光撮像等の各種の光学的な撮像方法を利用して撮像された動画像であるものとすることができる(図3参照)。
動画像取得部201は、図示しない撮像装置(顕微鏡撮像装置)から分析対象動画像を取得してもよく、ストレージに格納されている動画像やネットワークから供給された動画像を分析対象動画像として取得するものとすることも可能である。この際、動画像取得部201は、予め撮像された動画像から、分析対象の種類に応じて所定の周期でサンプリングし、分析対象動画像を取得してもよい。動画像取得部101は、取得した分析対象動画像を分析対象領域特定部202に供給する。
分析対象領域特定部202は、分析対象動画像を構成する静止画(以下、分析対象静止画)から「分析対象領域」を特定する(図13、St201)。分析対象静止画は、分析対象動画像の最初のフレームであってもよく、任意のフレームであってもよい。また、分析対象静止画は、分析対象動画像から所定の時間毎に抽出されたフレームであってもよい。分析対象領域は、分析対象静止画の視野において分析対象が存在する領域であり、例えば細胞が存在する領域である。
図13,14 分析対象領域特定部202は、分析対象静止画に画像処理を施し、分析対象領域を特定する。図14は分析対象静止画における分析対象領域を模式的に示す図である。同図における区画Dは、分析対象領域の特定単位を示し、分析対象静止画の一つ又は複数の画素を含む範囲とすることができる。斜線を付した区画Dが、分析対象領域特定部202によって分析対象が存在すると特定された区画であり、分析対象区画D1とする。分析対象区画D1の集合が分析対象領域である。図15は、分析対象静止画において特定された分析対象領域の例であり、白色の領域が分析対象領域である。
図15,16alt="図15,16" align="right" width="400"> 分析対象領域特定部202は、分析対象静止画に対し、ダイナミックレンジによる検出やマッチング等の画像処理によって、分析対象領域を特定するものとすることができる。この際、分析対象領域特定部202は、閾値によって、分析対象領域として検出する分析対象を選択することが可能であり、例えば神経細胞の細胞体を検出するか、神経突起を検出するか、あるいは両方を検出するか等を選択することが可能である。
動き量検出部203は、分析対象動画像における「動き量」(動きベクトル)を検出する(図13、St202)。動き量は、分析対象動画像を構成するフレーム間において、対応する各画素又は画素群の時間に伴なう移動量及び移動方向を含み、ブロックマッチング等の画像処理手法によって検出することが可能である。
ここで、動き量検出部203は、分析対象領域特定部202によって特定された分析対象領域(分析対象区画D1の集合)対して動き量を検出する。具体的には、動き量検出部203は、分析対象静止画のフレームから、次の分析対象静止画のフレームの間の分析対象動画像について、分析対象領域を構成する各分析対象区画D1における動き量を検出する。動き量検出部203は、各分析対象区画D1の動き量を動き速度に変換することができる。
図16は、分析対象動画像における動き速度を模式的に示す図であり、各分析対象区画D1において検出された動き速度を数値で示す。分析対象区画D1において、動き速度が一定値(ここでは1)以上の区画を動き検出区画D2とする。動き検出区画D2の集合が動き領域である。図17は、分析対象動画像における動き領域の例であり、動き領域を白色の領域として示す。
図17、18図16に示すように、分析対象静止画(図14参照)において分析対象区画D1とされなかった区画Dについては、動き量が検出されない。これにより、分析対象動画像の視野において分析対象が存在しない領域(例えば細胞と細胞の間)については、動き量が検出されず、動き量の検出を高速化すると共に、ノイズの発生を防止することが可能である。動き量検出部203は、分析対象領域、動き領域及び動き量を特徴量算出部204に供給する。
特徴量算出部204は、動き領域において「特徴量」を算出する(図13、St203)。特徴量は、分析対象動画像における時間範囲毎の動き量の特徴を示す量である。この時間範囲は、一定の時間範囲であってもよく、可変の時間範囲であってもよい。
特徴量算出部204は、「動き領域割合」を特徴量として算出することができる。動き領域割合は、分析対象領域に占める動き領域の割合であり、具体的には分析対象区画D1に占める動き区画D2の割合である。動き領域割合によって、分析対象が存在すると判定された領域(分析対象領域)のうち、動きが生じている領域(動き領域)がどの程度であるかを判断することが可能となる。例えば動き領域割合が大きい場合、分析対象(細胞等)の全体が振動しており、動き領域割合が小さい場合、分析対象の特定部分が振動している等と判断することができる。
【0072】また、特徴量算出部204は、「分析対象領域速度」を特徴量として算出することができる。分析対象領域速度は、分析対象領域における動き速度の平均値であり、各分析対象区画D1(動き区画D2を含む)の動き速度を平均することにより算出することができる。分析対象領域速度は、分析対象の全体における動き速度の平均値であり、分析対象の全体的な動き速度を判断することができる。平均する動き速度を分析対象領域に限ることによって、分析対象が存在しない領域(細胞の間等)の動き速度が平均されることを防止することが可能である。
また、特徴量算出部204は、「動き領域速度」を特徴量として算出することができる。動き領域速度は、動き領域における動き速度の平均値であり、各動き区画D2の動き速度度を平均することにより算出することができる。動き領域速度は、分析対象のうち、動いている部分の動き速度の平均値であり、例えば、分析対象において特定の部分のみが活発に振動している場合、その部分の動き速度を判断することが可能である。仮に分析対象の全体において動き速度の平均値を求めると、動いていない部分の動き速度も平均されてしまうため、動き領域速度は、分析対象において特定の部分のみが動いている場合に特に有効である。
さらに、特徴量算出部204は、「周波数特徴量」を算出することができる。特徴量算出部204は、第1の実施形態と同様に時間−動き量波形(図5参照)を算出し、時間−動き量波形に対して周波数解析を施すことにより周波数特徴量を算出することが可能である。
特徴量算出部204は、時間窓を移動させながら、時間窓に含まれる波形に対して高速フーリエ変換(FFT)解析を行い(図13、St)、得られた結果からパワースペクトル密度(power spectral density:PSD)を算出する。図18に、パワースペクトル密度の例を示す。
同図に示すように、特徴量算出部204は、所定の周波数帯におけるパワースペクトル密度の面積(PSDarea)を周波数特徴量として算出することができる。PSDareaを算出する周波数帯は、観測したい振動の周波数に応じて任意に設定することができ、例えば0〜0.1Hz以下とすることができる。
図19.20.21.22図19は、PSDareaをマッピングした例であり、神経細胞の細胞死の過程を示す。図19(a)は、分析開始時刻、図19(b)は0.75時間後、図19(c)は6時間後の0〜0.1HzにおけるPSDareaである。図中白色はPSDareaが大きい領域を示し、黒色はPSDareaが小さい領域を示す。図19(a)においては、細胞の全体において0〜0.1Hzの振動が大きいが、図19(b)においては、神経突起において同周波数帯の振動が大きく、細胞体において同周波数帯の振動が小さくなっている。図19(c)においては神経突起においても同周波数帯の振動が停止している。
このように、特徴量算出部204が所定の周波数帯におけるPSDareaを算出することにより、分析対象の振動のうち、注目する周波数帯における振動のみを抽出することが可能であり、周波数が異なる無関係な振動は解析から除外することが可能である。
また、特徴量算出部204は、第1の実施形態と同様に、周波数解析によって得られる平均強度、ピーク周波数又は平均パワー周波数(MPF:mean power frequency)等を周波数特徴量として算出することができる(図13、St205)。周波数解析には高速フーリエ変換(FFT)、ウェーブレット変換、最大エントロピー法(MEM)等の各種周波数解析手法が含まれる。特徴量算出部204は、算出した特徴量を特徴量表示部205に供給する。なお、特徴量算出部204は同一の時間範囲から複数種の特徴量を算出してもよい。




【0080】 特徴量表示部205は、特徴量の時間変化又は空間変化を可視化する。具体的には特徴量表示部205は、特徴量を可視化して分析対象動画像に重畳させ、特徴量表示動画像を生成する(図13、St206)ことができる。特徴量表示部205は、第1の実施形態と同様に、特徴量の値の大小に応じて色彩を付し、あるいは濃淡を付し、特徴量が算出された算出範囲に対応させて配置することによって特徴量を可視化することができる。特徴量表示部205は、上記可視化された特徴量を、分析対象動画像において特徴量が算出された時間範囲に対応するフレームに重畳させ、特徴量表示動画像を生成する.。
図20は、上述した動き領域を分析対象動画像に重畳させた特徴量表示動画像の例である。同図に示すように、特徴量表示部は、動き速度(図17参照)の大小に応じて色彩や濃淡を付し、特徴量表示動画像とすることができる。また、特徴量表示部205は、図19に示したようなPSDareaや動き量平均、動き量分散値、MPF等の各種特徴量を利用して、特徴量表示動画像を生成してもよい(図9参照)。また、特徴量表示部205は、上述した時間窓毎の周波数特性を表示させ、特徴量の空間変化を可視化してもよい(図13、St207)。
さらに特徴量表示部205は、特徴量算出部204によって算出された特徴量を表やグラフとして表示してもよい(図13、St208)。図21乃至図23は、特徴量表示部205によって表示される特徴量の表示態様の例である。図24は、特徴量表示部205に表示させる特徴量の選択のためのインターフェースを示す。図25は、特徴量を表示させる領域(ROI:Region of Interest、図中白枠)の選択のためのインターフェースを示す。特徴量表示部205は、図24や図25に示すインターフェイスによって指示された分析対象や特徴量を表示するものとすることができる。また、特徴量表示部205は、上述した分析対象領域や動き領域、各種特徴量等を利用して、ROIを自動的に選択してもよい。
本実施形態に係る分析システム200は以上のように構成される。分析システム200によれば、特徴量を利用して分析対象動画像における分析対象の動きを評価することが可能である。具体的には分析システム200は、生理活性物質の効果の評価、薬剤の効果、毒性の評価、神経細胞の品質管理、神経細胞の分化状態の評価、異常細胞やネットワーク異常の領域の特定、病態由来の細胞の評価による病態の評価等に利用することが可能である。
分析システム200の分析対象は特に限定されない。しかしながら、分析システム200の分析対象として神経細胞が好適である。神経細胞の動き(振動等)は、神経細胞に印加されている刺激の種類(抑制性や興奮性等)や神経細胞ネットワークの形成状態によって影響を受ける。しかしその動きは心筋細胞の拍動等と比較して微小であり、より精度の高い分析が要求される。分析システム200は、特徴量を指標として細胞の動きを高精度に分析することが可能であるため、神経細胞は本分析システムによる分析対象として好適である。
加えて本実施形態によれば、分析対象動画像において分析対象が存在する領域を分析対象領域として抽出し、分析対象領域について動き量の解析や特徴量の算出を実施する。神経細胞は心筋細胞等の他の細胞と比較してもその振動する部分が局所的であり、本実施形態に係る分析システム200の分析対象によって効果的に分析することが可能である。さらに、分析システム200においては特定の周波数帯におけるパワースペクトル密度の面積を分析に利用するため、神経細胞の神経突起や細胞体等の周波数の異なる振動をそれぞれ抽出することが可能であり、この点でも神経細胞の分析に適している。
本技術は、上記各実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において変更することが可能である。
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)分析対象を経時的に撮像した分析対象動画像において、動き量の特徴を示す特徴量を時間範囲毎に算出する特徴量算出部を具備する分析システム。
(2) 上記(1)に記載の分析システムであって、上記特徴量の時間変化又は空間変化を可視化する特徴量表示部をさらに具備する分析システム。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の分析システムであって、上記特徴量表示部は、上記特徴量の時間変化を可視化して上記分析対象動画像に重畳させ、特徴量表示動画像を生成する 分析システム。
(4) 上記(1)から(3)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、 上記分析対象動画像の特定の範囲を算出範囲として指定する範囲指定部をさらに具備し、上記特徴量算出部は、上記算出範囲毎に上記特徴量を算出する 分析システム。
(5)上記(1)から(4)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、 上記特徴量は、動きの量や方向の平均値、最大値、最小値、標準偏差、分散、変動係数又は周波数特徴量若しくはこれらの組み合わせである 分析システム。
(6) 上記(1)から(5)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、上記周波数特徴量は、周波数解析によって得られる平均強度、ピーク周波数又は平均パワー周波数である分析システム。
(7) 上記(1)から(6)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、上記分析対象は神経細胞である 分析システム。
(8) 上記(1)から(7)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、上記分析対象動画像を構成する静止画において、分析対象が存在する領域である分析対象領域を特定する分析対象領域特定部をさらに具備し、上記特徴量算出部は、上記分析対象動画像において、上記分析対象領域について上記特徴量を算出する 分析システム。
(9)上記(1)から(8)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、 上記特徴量算出部は、上記分析対象領域において動き速度が閾値以上の領域である動き領域を利用して上記特徴量を算出する 分析システム。
(10) 上記(1)から(9)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、上記特徴量算出部は、上記分析対象領域に占める上記動き領域の割合を上記特徴量として算出する 分析システム。
(11) 上記(1)から(10)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、上記特徴量算出部は、上記分析対象領域における動き速度の平均値を上記特徴量として算出する 分析システム。
(12) 上記(1)から(11)のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、上記特徴量算出部は、上記動き領域における動き速度の平均値を上記特徴量として算出する分析システム。
(13)上記(1)から(12のうちいずれか一つに記載の分析システムであって、上記特徴量算出部は、動き量の周波数解析によって得られるパワースペクトル密度の所定の周波数帯における面積を周波数特徴量として算出する 分析システム。
(14) 分析対象を経時的に撮像した分析対象動画像において、動き量の特徴を示す特徴量を時間範囲毎に算出する特徴量算出部 としてコンピュータを機能させる分析プログラム。
(15) 分析対象を経時的に撮像した分析対象動画像において、動き量の特徴を示す特徴量を時間範囲毎に算出する 分析方法。



脚注及び関連項目




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