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作成:2016.08.18|改訂:

特集|ナノコンポジットフィルムの製造方法

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鍵語1:ナノコンポジットフィルム
鍵語2:ソリューションプラズマ
鍵語3:
公開日:20130101:20160806


 8月3日、次世代電池として、より大きな容量を得ることができる金属空気電池や、既存の燃料電池の高機能化技術などの開発が注目されている。この中で、正極触媒には触媒性能などの点で、白金など高価なレアメタルを用いることが多い。また、従来は NCNP (窒素含有カーボン)を合成するために、真空プロセス/高温処理などが必要となるなど、コスト高の要因となっていた。芝浦工業大学の石崎貴裕准教授らの研究グループは、常温環境下のソリューションプラズマ処理で、窒素含有カーボン(NCNP)とカーボンナノファイバー(CNF)からなる炭素複合材料「NCNP-CNFコンポジット材料」の合成――燃料電池の正電極触媒として実用化できれば、白金などを使った場合に比べて部材コストの低減が可能――に成功したと発表。

【符号の説明】 1 ナノコンポジットフィルム 10 カーボンナノフィラー(CNF)  20 基材  P 近接点

ソリューションプラズマ処理とは

 現時点では「ソリューションプラズマ処理」の規定は一様でないが、液中プラズマ処理を意味する。従来法では、液中プラズマは、高温プラズマであったため溶液も高温となり、反応を制御することが難しかったが、電極間に印加する電圧制御の最適化により、液中に低温プラズマを生成できるようになる。その特徴は、溶液中のプラズマを材料合成に応用できる。あるいは、ソリューションプラズマは、溶液の温度を制御できことで、ナノ粒子の粒径制御や、ソリューションプラズマによって誘起された化学反応を制御できる。従来のプラズマでは分子構造が破壊される程の高エネルギー反応場であったが、ソリューションプラズマでは、分子構造を破壊することなく反応誘起できるため、表面修飾やボトムアップな材料合成にも応用できる点である。




プラズマの産業界における有用性

 気相で生成するプラズマの場合、中性のガス粒子(原子あるいは分子)が電離し、電子と正イオンが生成する。これらの量は中性ガス粒子にくらべ少ない。また少量ではあるが、中性ガス粒子への電子の付着により負イオンも生成する。これ以外に、中性で活性な励起種、不対電子を有し活性なラジカル、また放射される光子を生成している。これらの粒子の作用により、プラズマを用いると、反応を(1)ドライ、(2)低温、(3)高速の条件下で行わせることが可能になる。
 気相で生成するプラズマは、産業界の多くの分野で使用されている。 これに対し、 固相である金属中では、自由電子が集団的に振動している状態は固相中のプラズマと呼べる。この振動を粒子として量子化しプラズモンと呼ぶ。金属表面に微細な構造が形成された場合や金属ナノ微粒子の表面では、光が照射された場合、プラズモンが共鳴励起され、表面(局在)プラズモンが生成する。この表面プラズモンと光との相互作用により、金属ナノ粒子は独特の色調を呈する。こういった現象は、表面(局在)プラズモン共鳴と呼ばれ、局在的に著しく増強された電場が生成する。この共鳴現象を、表面分析、表面加工、医療などに応用。プラズモンを用いる学問分野は、電子を用いるエレクトロニクス、光を用いるフォトニクスに対し、プラズモニクスと呼ばれ、産業の基礎として成長をはじめている。
 これらに対し、液相中で生成するプラズマは、古くから、放電加工、水中溶接、放電浸炭、液体絶縁などの液中の放電現象技術として扱ってきたが、その物理・化学的な基礎については、ほとんど研究されなかった。近年、プラズマ材料科学分野で、液中で生成するプラズマ(『ソリューションプラズマ』)を、21世紀のコア技術研究を進められよとしている。ソリューションプラズマと名付けたのは、溶質と溶媒の組み合わせにより、さまざまなプラズマを生じさせることができ、 溶液(ソリューション)を強調するためといわれている(上図ダブクリ参照)。




特開2016-108560 ナノコンポジットフィルム及びナノコンポジットフィルムの製造方法

要約

 熱伝導性、電気伝導性及び機械的特性を高度に改善すると共に、自己発熱特性に優れたナノコンポジットフィルム及びナノコンポジットフィルムの製造方法を提供する。少なくとも、基材、及び前記基材中に分散した針状もしくは繊維状のカーボンナノフィラーを有するナノコンポジットフィルムであって、前記基材中に分散した前記カーボンナノフィラーの含有率が、0.10質量%以上25質量%以下であり、前記カーボンナノフィラーの長さL(μm)と、前記ナノコンポジットフィルムの厚さT(μm)とが、0.1≦T/L≦35 の関係を満たし、且つ、前記ナノコンポジットフィルムを400℃で10分間、加熱した際に、前記ナノコンポジットフィルムから発生する低分子量化合物の発生量が、3.0μg/g以上50μg/g以下であることを特徴とするナノコンポジットフィルムが提供される。

図1

特許請求範囲

    1. 少なくとも、基材、及び前記基材中に分散した針状もしくは繊維状のカーボンナノフィラーを有するナノコンポジットフィルムであって、前記基材中に分散した前記カーボンナノフィラーの含有率が、0.10質量%以上25質量%以下であり、前記カーボンナノフィラーの長さL(μm)と、前記ナノコンポジットフィルムの厚さT(μm)とが、0.1≦T/L≦35 の関係を満たし、 且つ、前記ナノコンポジットフィルムを400℃で10分間、加熱した際に、前記ナノコンポジットフィルムから発生する低分子量化合物の発生量が、3.0μg/g以上50μg/g以下であることを特徴とするナノコンポジットフィルム。
    2. 少なくとも、基材、及び前記基材中に分散した針状もしくは繊維状のカーボンナノフィラーを有するナノコンポジットフィルムであって、 前記基材中に分散した前記カーボンナノフィラーの含有率が、0.10質量%以上25質量%以下であり、前記カーボンナノフィラーの長さL(μm)と、前記ナノコンポジットフィルムの厚さT(μm)とが、0.1≦T/L≦35 の関係を満たし、且つ、前記ナノコンポジットフィルムを、前記ナノコンポジットフィルムの製造時に与えられる最大加熱温度に50℃を加えた温度で10分間、加熱した際に、前記ナノコンポジットフィルムから発生する低分子量化合物の発生量が、3.0μg/g以上50μg/g以下であることを特徴とするナノコンポジットフィルム。
    3. 前記カーボンナノフィラーが、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノコンポジットフィルム。
    4. 前記カーボンナノチューブが、多層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項3に記載のナノコンポジットフィルム。
    5. 前記カーボンナノフィラーは、有機材料により処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノコンポジットフィルム。
    6. 前記有機材料が、含窒素有機材料であることを特徴とする請求項5に記載のナノコンポジットフィルム。
    7. 前記カーボンナノフィラーは、X線光電子分光法によって、炭素原子と窒素原子の結合の存在が確認され、且つ、ラマン分光法で得られる1350cm−1付近のピークであるDバンドと、1580cm−1付近のピークであるGバンドとの面積比が、1以上2以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のナノコンポジットフィルム。
    8. 前記基材が、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のナノコンポジットフィルム。
    9. 前記基材が、少なくとも、下記の構造式1〜3で表される繰り返し単位のいずれかを有するポリイミド樹脂からなることを特徴とする請求項8に記載のナノコンポジットフィルム。
    10. 前記基材が、少なくとも、下記の構造式1〜3で表される繰り返し単位のいずれかを有するポリイミド樹脂からなることを特徴とする請求項8に記載のナノコンポジットフィルム。
    11. 針状もしくは繊維状のカーボンナノフィラーを含有するナノコンポジットフィルムの製造方法であって、少なくとも、
      (1)水中及び/又は有機溶剤中、有機材料共存下でカーボンナノフィラーにソリューションプラズマ処理を施す「SP処理工程」、
      (2)前記「SP処理工程」で得られたソリューションプラズマ処理を施したカーボンナノフィラー、基材及び/又は基材の前駆体及び有機溶剤を混合及び分散させることで、フィルム塗工液を調製する「CNF分散液調製工程」、
      (3)前記「CNF分散液調製工程」で得られたフィルム塗工液を塗膜して塗工膜を形成した後、加熱してフィルム化する「加熱/焼成処理工程」
      を有することを特徴とするナノコンポジットフィルムの製造方法。
    12. 前記ソリューションプラズマ処理時に電極間に印加されるパルス電圧のパルス幅が0.5〜20μ秒であることを特徴とする請求項11に記載のナノコンポジットフィルムの製造方法。
    13. 前記ソリューションプラズマ処理が、有機溶剤中で施されることを特徴とする請求項11又は12に記載のナノコンポジットフィルムの製造方法。
    14. 前記有機溶剤と、前記有機材料とが、同一化合物であることを特徴とする請求項13に記載のナノコンポジットフィルムの製造方法。
    15. 前記有機溶剤と、前記有機材料とが、同一化合物であることを特徴とする請求項13に記載のナノコンポジットフィルムの製造方法。
    16. 前記有機溶剤が、N−メチルピロリドンであることを特徴とする請求項13又は14に記載のナノコンポジットフィルムの製造方法。
    17. 前記基材が、ポリイミド樹脂であり、前記基材の前駆体が、ポリアミック酸であることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一項に記載のナノコンポジットフィルムの製造方法。



背景

 高分子材料を基材(母材)とし、ナノサイズ形状を呈する充填剤(ナノフィラー)を適切に分散させたナノコンポジット材料は、各種技術分野に利用されている。その一方で、更なる高機能性を得るための開発は未だ継続しており、非特許文献1の緒言にもあるように、前記ナノフィラーの表面改質に関する技術も種々提案されている。例えば、特許文献1は、カーボンナノフィラーを含むポリアミドナノコンポジットのペレットを、二軸混練機を用いたコンパウンディング法により製造する技術を開示する。特許文献1に開示されたポリアミドナノコンポジットは、自動車や航空機等の構成部材に使用される。一方、特許文献2は、表面処理を施していないカーボンナノチューブを含むポリイミドナノコンポジットを開示する。特許文献2に開示されたナノコンポジットは、チューブ状であり、電子写真装置の加熱定着装置のベルト部材として使用される。
   カーボンナノフィラーを含むナノコンポジットフィルムは、例えば、概略以下の工程によって作製される。即ち、先ず、フィルムの基材となる高分子材料又は高分子材料の前駆体とカーボンナノフィラーとを溶剤中に分散させ、塗工液とした後、前記塗工液を基体上に塗工することで塗工膜を作製する。そして、この塗工膜を加熱する。これにより、ナノコンポジットフィルムが作製される。
  ところで、カーボンナノフィラーは、数多くの優れた特性を有する反面、ナノコンポジット内部に分散させ難いといった技術的課題を有している。特にカーボンナノチューブは、比表面積が大きく、凝集力も強いため、良好な分散状態を得ることが困難とされてきた。このため、カーボンナノフィラーをナノコンポジット内で分散させるための様々な技術が提案されている。その一例として、特許文献1、特許文献3及び非特許文献1に開示されたソリューションプラズマ処理(以下、「SP処理」とも称する)、更には、特許文献4に記載されているストリーマ放電処理等が知られている。
  一般に、カーボンナノフィラーにSP処理を施す際には、概略以下の手順の処理が行われる。即ち、水中にカーボンナノフィラー及び有機材料等を投入して事前分散液を調製する。次いで、前記事前分散液中にプラズマを発生させ(「ソリューションプラズマ」ともいう)、前記有機材料を電離する。この電離によって生じた有機基のイオンは、カーボンナノフィラーの表面に導入される。有機基が導入されたカーボンナノフィラー、即ち、SP処理カーボンナノフィラーは、導入された有機基によって、カーボンナノフィラー間の凝集力が弱まると共に、ナノコンポジットフィルムの基材との親和性を増すことが出来る。したがって、SP処理カーボンナノフィラーを用いることで、ナノコンポジットフィルム中にカーボンナノフィラーを容易に分散させることが可能となる。
  ところで、ストリーマ放電処理を用いる場合も、SP処理同様に、事前分散液中でカーボンナノフィラーを処理することが可能である。ただし、ストリーマ放電処理は、高電圧下で処理を施すため、量産性を高めながら、カーボンナノフィラーへのダメージを如何に軽減するかが課題となっている。

【特許文献1】特開2012-17443号公報
【特許文献2】特開2013-114068号公報
【特許文献3】特開2013-147367号公報
【特許文献4】特許第4752073公報
【非特許文献1】稗田純子他"ソリューションプラズマ表面修飾を用いたナノカーボン分散コンポジット材料の作製"日本金属学会誌、第73巻、第12号(2009)

発明が解決しようとする課題

前述したように、カーボンナノフィラーの中には、優れた熱伝導性と電気伝導性を有するものがある。そして、近年では、このような特性を十分に生かしたナノコンポジットフィルムが切望されている。
ここで、ナノコンポジットフィルムに関して、これまでに提案されてきた技術では、分散しにくいカーボンナノフィラーを如何にして分散させ、機械的強度を担保するかということに主眼が置かれていた。即ち、従来の技術では、カーボンナノフィラー同士が孤立分散していることが好ましいとされていた。
しかしながら、このようにカーボンナノフィラー同士があまりに離れていると、カーボンナノフィラー間に存在する基材(例えば、上述したポリアミド樹脂やポリイミド樹脂)によって、カーボンナノフィラー間の界面抵抗の影響が大きくなる。したがって、従来のナノコンポジットフィルムは、カーボンナノフィラーの有する熱伝導性や電気伝導性等を十分に活かしているとは言えず、改善の余地を残していた。
カーボンナノフィラーの熱伝導性や電気伝導性等を活かすためには、カーボンナノフィラー同士をなるべく近接させて存在させた方が良いことになる。しかしながら、カーボンナノフィラー同士の接近は、必然的に凝集状態を招き、その凝集した部分が破壊の起点となるため、フィラーとして期待される添加効果が得られないばかりか、多くの場合、カーボンナノフィラーの使用量の増加や機械的強度の著しい低下といった問題を引き起こす。
ところで、針状もしくは繊維状のカーボンナノフィラーには、分散時に用いる溶剤によって、著しい増粘現象を生じものが多数存在する。このようなカーボンナノフィラーとしては、例えば、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
一般に、カーボンナノチューブは、強い凝集力によってバンドル構造を形成しており、溶剤中に分散させてバンドル構造を解く過程において、著しい増粘現象を生じる。この理由に関する詳細は不明であるが、本発明者等は、カーボンナノチューブがバンドル構造内(即ち、カーボンナノチューブ間)に溶剤を取り込み、膨潤状態となったことが原因であると考えている。
したがって、塗工液中の針状もしくは繊維状のカーボンナノフィラーが、カーボンナノチューブのようにバンドル構造を形成したままの状態、又は自己凝集しているような状態で塗工された場合、ナノコンポジットフィルムの成膜性に悪影響を及ぼしたり、成膜後のナノコンポジットフィルムに期待通りの効果が発現されないといった問題が発生する。
上記のように、カーボンナノフィラーを含むナノコンポジットフィルムの特性は、フィルム内部に分散するカーボンナノフィラーの分散状態によって大きく変化し、その特性の全てを高度に達成することは非常に困難となっていた。




実施形態

1.ナノコンポジットフィルムの構成

先ず、図1に基づいて、本実施形態に係るナノコンポジットフィルムの全体構成について説明する。図1に示すように、ナノコンポジットフィルム1は、基材20と基材20中に分散したカーボンナノフィラー(以下、「CNF」とも称する)10とを備える。
CNF10としては、CNFを基材20内に等方的に分散させ、良好なネットワーク構造を構築する目的から、針状もしくは繊維状の形状を呈するCNFを用いる。
また、CNF10の長さL(μm)とナノコンポジットフィルム1の厚さT(μm)とは、0.1≦T/L≦35の関係を満たす。好ましくは、0.25≦T/L≦25の関係を満たす場合であって、より好ましくは、0.25≦T/L≦20の関係を満たす場合である。これによって、ナノコンポジットフィルム1は、熱伝導性、電気伝導性及び機械的特性を高度に改善されると共に、優れた自己発熱特性を発現することが出来る。
ここで、針状もしくは繊維状のCNF10としては、製造するナノコンポジットフィルム1の厚さTを勘案し、上記T/Lの条件を満たす長さLを呈するCNFを選択する。
CNFの長さLは、従来公知の方法を用いて測定することが出来る。
例えば、測定対象とするCNFの拡大写真を撮影した後、前記拡大写真中の測定対象物の画像の輪郭が明瞭になるように画像コントラストを調整し、形状測定用画像を得る。その後、前記形状測定用画像を適宜拡大等した上で、50個以上の凝集していないCNFを無作為に選択し、画像解析装置やノギス等の計測器具を用いて、各CNFの長さを計測する。そして、得られたCNFの長さの測定値の算術平均値を求め、本発明に係るCNFの長さL(μm)とすることが出来る。
一方、ナノコンポジットフィルムの厚さTは、以下の方法により測定される。即ち、ナノコンポジットフィルム1の面上に、複数の測定点を概ね1cm間隔に設定し、各測定点におけるナノコンポジットフィルム1の厚さをマイクロメーター等の計測機器を用いて計測する。そして、得られた厚さの測定値の算術平均値を求め、本発明に係るナノコンポジットフィルムの厚さT(μm)とすることが出来る。尚、本発明に係るナノコンポジットフィルム1の厚さTは、例えば、10μm〜500μmである。
本実施形態では、カーボンナノフィラーの含有率が0.10質量%以上25質量%以下であり、T/Lが0.1以上35以下なので、ナノコンポジットフィルム1内にカーボンナノフィラーの存在数が最適化されたネットワーク構造を形成することが可能となる。その結果、各特性を高度に改善することが出来る。尚、T/Lは、概念的には、ナノコンポジットフィルム1の厚さ方向の両端をCNF10で連結するために必要なCNF10の個数となる。
ところで、本発明者等が鋭意検討したところ、ナノコンポジットフィルム1中に存在する低分子量化合物の存在量が、CNF10の分散状態と密接な関係があることを知見した。即ち、CNF10がバンドル構造を呈したり、糸毬状に自己凝集しているような場合、それ等の凝集構造中には、ナノコンポジットフィルム1の製造時に用いた原料等に由来する低分子量化合物が取り込まれているのである。従って、ナノコンポジットフィルム1を所定温度で加熱した際に発生する低分子量化合物の発生量を測定することにより、ナノコンポジットフィルム1中でのCNF10の分散状態を間接的に把握することが出来るのである。
本実施形態において、ナノコンポジットフィルム中から発生する低分子量化合物の発生量とは、前記ナノコンポジットフィルムを製造する際に与えた最大加熱温度に50℃を加えた温度で10分間、再度加熱した際に発生する低分子量化合物の発生量の総質量を、再加熱に用いたナノコンポジットフィルムの質量で除した値を意味する。
例えば、ナノコンポジットフィルム1の基材20がポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂であって、ナノコンポジットフィルム1のイミド化処理時に最大350℃で加熱/焼成処理を施した場合には、400℃(最大加熱温度350℃に50℃を加えた温度)で10分間、再加熱した際に発生する低分子量成分の発生量を、再加熱に用いたナノコンポジットフィルム1の質量で除した値で決定される。
本実施形態では、ナノコンポジットフィルム1を、前記ナノコンポジットフィルムの製造時の最大加熱温度に50℃加えた温度で10分間、加熱した際にから発生する低分子量化合物の発生量が、3.0μg/g以上50μg/g以下の範囲となるように調整する。好ましくは、3.0μg/g以上40μg/g以下であって、より好ましくは、3.0μg/g以上30μg/g以下の範囲となるように調整する。
例えば、 ナノコンポジットフィルム1の基材20がポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂である場合には、400℃で10分間、再度加熱した際に、前記ナノコンポジットフィルムから発生する低分子量化合物の発生量が、3.0μg/g以上50μg/g以下の範囲となるように調整する。好ましくは、3.0μg/g以上40μg/g以下であって、より好ましくは、3.0μg/g以上30μg/g以下の範囲となるように調整する。これにより、CNF10のネットワーク構造中のカーボンナノフィラーの界面抵抗と凝集状態の存在量を最適化することが可能となる。即ち、低分子量化合物の発生量が3.0μg/g未満の場合、ナノコンポジットフィルム1中でのCNF10は孤立分散状態(凝集状態の存在量が少ない)になるので、CNF10同士の接近・接触(例えば、図1に示されるCNF10同士の近接点P)が困難となり、界面抵抗が増大してしまう。一方で、低分子量化合物の発生量が40μg/gを超える場合、凝集状態のCNF10の存在量が多くなるので、フィラーとして期待される補強効果が得られないばかりか、機械的強度が著しく低下する。更に、前記低分子量化合物の一部は、ナノコンポジットフィルム1の成膜時に揮散する場合もあり、この場合には、成膜時のナノコンポジットフィルム1にピンホール等を発生させる。
従って、本実施形態のように、CNF10の長さLとナノコンポジットフィルム1の厚さTの関係を満足した上で、低分子量化合物の発生量を上記の範囲内に制御することによって、ナノコンポジットフィルム中のCNF10のネットワーク構造を最適化することが可能となる。その結果、ナノコンポジットフィルム1は、高度に改善された熱伝導性、電気伝導性及び機械的特性を呈すると共に、優れた自己発熱特性を発現することが出来る。
更に、ナノコンポジットフィルム1の成膜性も改善される。
上記低分子量化合物とは、例えば、ナノコンポジットフィルム1の作製時に用いられる原料等に由来する有機化合物が挙げられる。また、発生した低分子量化合物の定量には、例えば、熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析計(TCT−GC/MS)が用いられ、ヘキサデカンを標準物質とした時の相対値(ヘキサデカン換算値)として求められる。
具体的には、先ず、測定対象となるナノコンポジットフィルム1から、一辺2cmの正方形状の試験片を切り出して質量Wを精秤する。その後、前記試験片を「シリコンウエハーアナライザーSWA−256型(ジーエルサイエンス社製)」の加熱炉に入れ、He気流中で25℃/分の昇温速度で400℃に達するまで加熱し、その状態で10分間保持する。その間にナノコンポジットフィルム1から揮散した低分子量化合物をテナックス吸着管に捕集する。
次いで、前記テナックス吸着管を270℃に加熱し、捕集した前記低分子量化合物を脱離し、これをTCT−GC/MSに導入して、定量分析を行う。尚、この時のTCT条件は、「低分子量化合物のコールドトラップ温度;−130℃、カラム導入時の加熱温度;280℃」であり、GC測定条件は、「使用カラム;CP−SIL5CB(内径0.25mm×長さ60m、クロムパック社製)、温度;40℃(保持時間;5分間)〜280℃(昇温速度;10℃/分)、キャリアガス流速;1.0mL/分」であり、MS測定条件は、「イオン源温度;230℃、イオン化法;EI、測定質量範囲;m/z=30〜600」である。
測定後、TICクロマトグラム上に現れた全成分のピーク面積の総和を、ヘキサデカン20ngの面積値で除してヘキサデカン換算値とした後、前記ヘキサデカン換算値をナノコンポジットフィルム1の試験片の質量Wで除して、本発明に係るナノコンポジットフィルム1から発生する低分子量化合物の発生量を求めることが出来る。
CNF10は、ナノコンポジットフィルム1の総質量に対し、0.10質量%以上25質量%以下の範囲でナノコンポジットフィルム1中に含有される。CNF10の含有率は、0.50質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。CNF10の含有率を上記の範囲内で用いることで、ナノコンポジットフィルムに求められるしなやかさと強靭さをバランスよく実現することが出来る。
CNF10の含有率は、例えば、「JIS K 6227;1998(ゴム−カーボンブラックの定量−熱分解法及び化学分解法)等を参考にして測定することが出来る。例えば、基材20がポリイミドのような難熱分解性樹脂である場合には、予め、前記難熱分解性樹脂を加水分解した後、示差熱−熱重量同時測定装置(TG−DTA)を用いて、窒素ガス雰囲気下での質量変化と空気雰囲気下での質量変化を求めることで決定することが出来る。
このように、本実施形態に係るナノコンポジットフィルム1は、CNF10の長さとナノコンポジットフィルム1の厚さTの関係(T/L)、低分子量化合物の発生量及びCNF10の含有率が適切な範囲に設定されるので、熱伝導性、電気伝導性及び機械的特性が高度に改善されると共に、優れた自己発熱特性を発現することが出来る。

(CNFの構成)

  CNF10は、上述したように、針状もしくは繊維状の形状を有する。本発明に係るCNF10は、製造するナノコンポジットフィルムの厚さTを勘案し、T/Lの値が上記範囲を満足するような長さLを呈するCNFから選定される。この時、基材20中におけるネットワーク構造の構築の容易さから、CNF10のアスペクト比(長さL(μm)/直径D(μm)は、20,000以下のものが好ましく、特に、500〜10,000の範囲のものがSP処理を施し易いので好ましく用いられる。CNF10の直径D(μm)は、CNF10の長さ方向に垂直な断面の直径を意味し、CNF10の長さL(μm)を計測する際に、同様の方法で求めることが出来る。
CNF10は、例えば、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する)、炭素系素材のウィスカー等である。これらの中でも、CNTが好ましい。CNTは、多層CNT(MWCNT)であっても、単層CNT(SWCNT)であっても良い。
CNF10は、例えば、液中で、有機材料と共にSP処理を施すことによって、ナノコンポジットフィルムの製造に好ましく用いられるフィラーに改質することが出来る。具体的には、液中にCNF10と有機材料等を投入し、事前分散液とした後、前記事前分散液中に、対向する一対の電極を設ける。前記電極間にパルス電圧を印加し、事前分散液中にソリューションプラズマを発生させ、前記有機材料の電離によって生じた有機基のイオンがCNF10の表面に反応することで改質される。CNF10の表面に有機基が導入されることによって、ナノコンポジットフィルム1への親和性を改善したり、自己凝集を防止することが可能となる。これによって、CNF10の分散性は、飛躍的に改善されるので、ナノコンポジットフィルム1中でのCNF10の分散状態を、容易に制御することが出来る。
この時、CNF10として、MWCNTを選択することで、CNTの優れた特性を維持しながら有機基の導入を容易なものとすることが出来る。更に、MWCNTの中でも、ラマン分光法で測定されるDバンドとGバンドの面積比(以下、「D/G面積比」と称す)が、0.80以上を呈するものが、有機基の導入に優れ、特に好ましく用いられる。
CNF10のD/G面積比を求めるには、先ず、スライドグラス上に測定対象とするCNF10を少量採り、顕微ラマン分光装置「NRS−3300(日本分光社製)」を用い、「励起用レーザ波長;532nm、対物レンズ;20倍、露光時間;60秒×2回、スリット;0.1mm×6mm、グレーティング;600L/mm、試料条件;室温/大気中」の測定条件で、ラマンスペクトル測定を行う。これにより、CNF10が呈するDバンドとGバンドを検出する。例えば、CNFがCNTの場合、構造欠陥等に由来するSP3炭素原子(ダイヤモンドライク)に対応するDバンド(1350cm−1付近のピーク)とグラファイト構造に由来するSP2炭素原子(グラファイトライク)に対応するGバンド(1580cm−1付近のピーク)が観測される。測定によって得られたDバンドのピーク面積をGバンドのピーク面積で除すことで、CNF10のD/G面積比を求めることが出来る。
ここで、CNF10をSP処理する際に用いられる有機材料としては、SP処理時にイオン化することが可能である化合物の中から、基材の種類や用途・目的等を勘案して、適宜選択される。例えば、含窒素有機材料は、ソリューションプラズマによりイオン化し易く、CNF10表面への有機基の導入率に優れるため、好ましく用いられる。この時、基材20がポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂等の含窒素樹脂である場合、SP処理を施されたCNF10の表面には含窒素有機基が導入されているので、基材20との親和性も良好なものとなる。その結果、基材20内でのCNF10の分散性を精密に制御することが可能となるので、得られるナノコンポジットフィルムの特性を任意に調整することが可能となる。
前記含窒素有機材料の具体例としては、例えば、アンモニア、各種アミン(例えば、アミノベンジルアルコール等)、ε−アミノカプロン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、2−アミノ安息香酸、2−アミノベンジルアミン、及びフタルイミド等の化合物、アミノベンジルアルコール基等の置換基を有する化合物が挙げられる。また、これ等の含窒素有機材料からCNF10に導入される含窒素有機基としては、例えば、芳香族アミノ基や脂肪族アミノ基等が挙げられる。
ところで、SP処理によってCNF10の表面に有機基を導入する際、有機基の導入量にもよるが、CNF10を形成する結合を切断するので、構造欠陥の生成に伴って、CNF10がもつ本来の特性が失われる可能性がある。例えば、CNF10がCNTである場合には、CNT表面のグラファイト構造に由来するSP2炭素原子(グラファイトライク)がSP3炭素原子(ダイヤモンドライク)となるため熱伝導性や電気伝導性が低下する可能性がある。そのため、以下で説明するように、各種測定方法によってCNF10の表面への有機基の導入量や構造欠損等を確認しながら、SP処理条件を最適化することが好ましい。
CNF10の表面への有機基の導入は、例えば、X線光電子分光法(XPS法)等により確認することが可能である。具体的には、先ず、試料ホルダーに貼付したカーボンテープ上に測定対象とするCNF10を振り掛けて固定し、走査型X線光電子分光装置「VG Theta Probe(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製」を用い、「照射X線;単結晶分光AlKα、X線スポット径;800μm×400μmの楕円形)」の測定条件で、有視状態面についてサーベイスキャン測定(定性分析)を行う。その後、着目元素や検出元素に関するナロースキャン測定(状態分析)を行うことで、結合状態や官能基成分の情報を得ることが出来る。
更に、CNF10の表面への有機基の導入量は、元素分析やラマン分光法等により確認することが可能である。例えば、ラマン分光法等により確認する場合には、上述のD/G面積比を求める方法を用いることが出来る。例えば、CNF10がCNTの場合、SP3炭素原子(ダイヤモンドライク)に対応するDバンド(1350cm−1付近のピーク)とSP2炭素原子(グラファイトライク)に対応するGバンド(1580cm−1付近のピーク)に着目し、SP処理前後でのD/G面積比を比較することにより、新たな共有結合が生み出されたことを把握することが出来る。
これらの分析方法は、適宜、組み合わされて使用される。例えば、XPS法で有機基の導入が確認しながら、ラマン分光法で得られたSP処理前後のCNF10のD/G面積比を比較することで、SP処理による有機基の導入と単なる構造欠陥の進行とを区別することが出来る。即ち、XPS法により有機基の導入が確認されずにD/G面積値が増加する場合には、構造欠陥が主体的に進行していることを意味するので、SP処理条件の最適化のための指針とすることが可能である。

(基材の構成)

化2 本実施形態に係るナノコンポジットフィルム1は、様々な用途に使用可能であり、様々な形に成形されて使用されても良い。
基材20は、ナノコンポジットフィルム1内でCNF10を保持する材料であり、その種類はナノコンポジットフィルム1の用途や目的によって決定される。
例えば、基材20として、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を選択した場合には、機械的特性、熱的・化学的に安定な特性に加え、熱伝導性や電気的特性に優れたナノコンポジットフィルムを得ることが出来る。
本実施形態に適用可能なポリイミド樹脂としては、例えば、「安藤慎治"ポリマー系耐熱・絶縁材料物性の基礎−ポリイミドを中心に−"材料の化学と工学、Vol.49、No.5、Oct.2012」に開示されているポリイミド類を参考にすることが出来る。また、前記文献に記載されているように、(1)主鎖に回転自由度の高い連結基を導入する、(2)主鎖に含まれるベンゼン環の連結位置を変更する、(3)主鎖に含まれるベンゼン環の側鎖として化学的に安定でかさ高い置換基を導入する等により、使用目的に適した熱可塑性、溶剤可溶性及び熱硬化性を有するポリイミドを設計することが出来る。
例えば、ナノコンポジットフィルム1を電子写真装置の加熱定着装置のベルト部材として用いる場合、基材20にはポリイミド樹脂が選択される。このような用途では、特に、ナノコンポジットフィルム1に対して、機械的特性に優れ、熱的や化学的に安定な特性が望まれることから、下記の構造式1(BPDA/ODA)、構造式2(BPDA/PDA)、又は構造式3(PMDA/ODA)で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を、其々単独で、或いは2種類以上の混合物として使用することが出来る。
化3 また、ポリイミド樹脂が共重合体である場合には、構造式1で表わされる繰り返し単位と構造式2で表わされる繰り返し単位とを有するポリイミド共重合体A、構造式1で表わされる繰り返し単位と下記の構造式4で表わされる繰り返し単位とを有するポリイミド共重合体B、構造式3で表わされる繰り返し単位と構造式5で表わされる繰り返し単位とを有するポリイミド共重合体C、構造式2で表わされる繰り返し単位と構造式6で表わされる繰り返し単位とを有するポリイミド共重合体D、構造式2で表わされる繰り返し単位と構造式7で表わされる繰り返し単位とを有するポリイミド共重合体E、であることが好ましい。

 これらのポリイミド共重合体A〜Eは、其々単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
上記の構造式1〜3で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド樹脂及びポリイミド共重合体A〜Eは、其々に対応するポリイミド前駆体を用いて、チューブ形状に成型加工した後、イミド化する方法によって、電子写真装置の加熱定着装置のベルト部材に用いることが出来る。
上述したように、ナノコンポジットフィルムの基材設計や材料選択は、ナノコンポジットフィルムの用途や目的、更には生産性等に求められる特性や制約を勘案した上で行われる。




2.ナノコンポジットフィルムの製造方法

次に、ナノコンポジットフィルム1の製造方法について説明する。ナノコンポジットフィルム1の製造方法は、概略的には、(1)SP処理工程、(2)CNF分散液調整工程及び(3)加熱/焼成処理工程を含む。

(SP処理工程)

SP処理工程は、CNFの表面改質を目的とした工程であり、水中及び/又は有機溶剤中(以下、「液中」ともいう)、有機材料共存下でCNFにソリューションプラズマ処理を施し、CNFの表面に有機基を導入する工程である。
具体的には、先ず、処理対象物とするCNF(以下、未処理CNFとも称す)を溶剤に投入し、予備分散を行う。ここで、溶剤の種類は、ソリューションプラズマ法に使用可能なものであって、CNFの分散やナノコンポジットフィルムの製造に好適に用いられるものから、適宜選択される。そのような液体としては、例えば、溶剤は、水、エタノールやメタノール等の有機溶剤及びこれらの混合物が挙げられる。
ところで、本発明の実施形態においては、誘電率の低い有機溶剤中でもSP処理が可能である。従来、例えば、N−メチルピロリドン(以下、「NMP」と称す)のように誘電率の低い有機溶剤中では、ソリューションプラズマを発生させることが困難であると考えられていた。しかしながら、本発明者等は、鋭意検討の結果、NMPのような低誘電率の有機溶剤中であっても、SP処理に供する未処理CNFの予備分散状態を制御することにより、ソリューションプラズマを安定して発生させることが可能であることを見出した。この発生メカニズムは明確ではないが、ソリューションプラズマを発生させるための電極間に、導電性に優れ、且つ針状もしくは繊維状の形状を呈するCNFが存在することによって、ソリューションプラズマが発生し易い雰囲気が出来上がったのではないかと推定している。
これにより、SP処理に用いる有機溶剤の選択幅が広がっただけでなく、例えば、後工程で用いることが想定されている有機溶剤中で、直接、SP処理を施すことにより、SP処理後にCNFを固液分離し、乾燥させる工程を簡略化もしくは不要とすることが出来ることを知見したのである。
更に、用いる有機溶剤そのものを、SP処理時に用いる前記有機材料を兼ねることも可能となる。例えば、CNFを含有したポリイミド樹脂からなるナノコンポジットフィルムを製造する際には、前記含窒素有機材料として、ポリイミド樹脂の製造に欠かせないNMPやジメチルアセトアミドを選択することで、大幅な工程短縮が可能となり、生産性の向上に大きく寄与すること出来る。
ところで、未処理CNFの予備分散は、その処理条件によってはCNF自身が切断される可能性がある。したがって、予備分散時には、CNFへのダメージを抑制出来る程度の分散方法を選択する必要がある。
具体的には、事前分散処理は、高速回転剪断型撹拌機又は高圧噴射式分散機(超高圧微粒化装置とも称される)を用いて行われることが好ましい。高速回転剪断型撹拌機の例としては、一般に広く用いられているホモジナイザー等が挙げられる。一方、高圧噴射式分散機の例としては、吉田機械興業社製「ナノヴェイアTM」等が挙げられる。
次いで、前記予備分散液に有機材料を投入し、SP処理に供される事前分散液とする。ここで、有機材料は、上述したように未処理CNFに有機基を導入するための材料であり、前記予備分散時に、未処理CNFと同時に液中に投入し、CNFの予備分散と事前分散液の調整を同時に行ってもよい。
続いて、前記事前分散液にSP処理を施す。具体的には、内部に対向する一対の電極(電極対)を具備したSP処理容器内に前記事前分散液を投入する。次いで、電極対に高電圧パルスを印加する。これにより、電極近傍の事前分散液がジュール加熱され、事前分散液の一部がガス化し、電極周囲に気泡が形成される。気泡内では高電圧パルスによる高電圧絶縁破壊放電が起こる。この放電によって、気泡内及び気泡と前記事前分散液の気液界面に存在する有機材料が電離(プラズマ化)し、有機基のイオンが生成される。有機基のイオンは、事前分散液中に拡散し、未処理CNFの表面に結合する。これにより、未処理CNFに有機基が導入され、SP処理を施されたCNF(以下、「SP処理CNF」と称す)が製造される。SP処理CNFは、図1におけるCNF10として、好ましく用いられる。
ここで、SP処理時に使用される電極対の材質は、特に制限されないが、電極の抵抗値や耐久性等を勘案し、タングステン等の高融点金属材料を使用することが好ましい。電極間の距離は0.5〜100mmに調整される。特に、電極間距離を0.5〜5mmとすることにより、電極間で発生するプラズマを好ましい状態にすることが可能であり、0.5〜2mmとすることにより、CNF表面の処理状態をより制御し易くすることが出来る。また、使用される電極は0.5〜3mmの太さのものから選択される。特に、電極の太さを0.5〜2mmとすることにより、電極間で発生するプラズマをより良好な状態にすることが出来る。
一方、電極間に印加される高電圧パルスとしては、CNFの表面処理効率を高めるために、矩形波を呈する高電圧パルスが好ましい。高電圧パルスの印加条件としては、印加電圧は0.5〜50kVで調整される。特に、印加電圧を0.5〜2.5kVとすることで、CNFの構造欠陥を抑制しつつ、有機基の導入を促進することが可能となる。また、周波数は1〜100kHzで調整される。例えば、水やメタノール中でSP処理を行う場合には15〜60kHzで調整する。更に、パルス幅は0.5〜20μ秒で調整され、特に印加電圧を低く設定する場合には0.8〜3.5μ秒で調整することが好ましく、特に、1〜3.5μ秒で調整するとCNFを好適に処理することが出来る。
以上の条件下でSP処理を行うことで、効率良くCNFを改質し、前記T/L及び低分子量化合物の発生量を所定の範囲内に調整することが出来る。更に、SP処理中にストリーマ放電が発生することを抑制することが出来る。事前分散液内でストリーマ放電が発生した場合、事前分散液中に電極を構成する金属元素、即ち電極由来金属元素が溶出する可能性が高まる。事前分散液中に溶出した電極由来の金属元素(例えば、白金元素、タングステン元素等)がナノコンポジットフィルム1に混入する可能性があるため、ナノコンポジットフィルム1に与える影響を勘案し、ストリーマ放電が発生しにくいSP処理の条件を決定することが好ましい。
そして、SP処理後の事前分散液から溶剤を除去することで、SP処理を施したCNF10を得る。ここで、SP処理時に用いた溶剤と、塗工液調製時に使用する溶剤が同一の場合、溶剤除去を行わない、もしくは簡略化することが可能である。特に、有機溶剤中で直接SP処理を施した場合、従来の水中で行っていた方法と比較し、CNF10の濾過工程及び乾燥工程等を簡略化出来るため、設備投資と製造時間の両面から、生産性の向上に大きく寄与することが出来る。

(CNF分散液調製工程)

CNF分散液調整工程は、SP処理CNF、基材及び/又は基材の前駆体、及び有機溶剤を混合及び分散させることで、フィルム塗工に用いるCNF分散液を調製する工程である。
具体的には、先ず、塗工液用の溶剤にSP処理CNFを投入し、予備分散を行った上で、基材及び/又は基材の前駆体を投入し、CNF分散液を調製する。SP処理CNFの表面には有機基が導入されているので、CNFは溶剤中で簡単に分散し、且つ塗工液中で再凝集しにくい。事前分散液の溶剤と塗工液の溶剤が同一の場合には、前記予備分散等を更に簡略化することが出来るので、生産性の向上に大きく寄与することが出来る。

(加熱/焼成処理工程)

加熱/焼成処理工程は、前記CNF分散液調整工程で得られたフィルム塗工用のCNF分散液を、基体上に塗膜して塗工膜を形成した後、前記塗工膜を加熱/焼成してフィルム化する工程である。
具体的には、先ず、金型等の基体上に塗工液を塗工し、塗工膜を形成する。ここで、基体の形状は、所望するナノコンポジットフィルムの形状に応じて選択される。例えば、ナノコンポジットフィルム1をチューブ形状とする場合には、基体として、円柱又は円筒形状の金型を選択する。塗工液を基体上に塗工する方法は特に問わず、ドクターブレード法、バーコーティング法、ディスペンサー法等の任意の方法が適用可能である。
基体の材料は、製造するナノコンポジットフィルムの材質、前記塗工液の性状、製造工程から受ける制約(例えば、加熱温度に対する耐熱性、耐薬品性/化学的安定性)等を勘案して、適宜選択される。例えば、基体の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス等の金属、アルミナ、炭化ケイ素等のセラミックス、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール等の耐熱樹脂等が挙げられる。尚、基体からの離型性を良くするため、シリコーンオイル等からなる離型剤を基体の周面に予め塗工しておいても良い。また、基体の周面をセラミックスコーティングしておいても良い。
製造するナノコンポジットフィルムをチューブ形状とする場合、例えば、ディスペンサー法を用いて製造することが出来る。具体的には、先ず、円柱又は円筒形状の基体を周方向に一定速度で回転させながら、CNF分散液をディスペンサーから基体の周面(外周面)に連続的に供給する。この時、ディスペンサーの吐出口(ノズル)は、基体の周面に接触させ、基体の周面に塗工液を供給しながら、基体の軸方向に一定速度で移動する。これにより、基体の周面に塗工液が螺旋状に塗工され、ナノコンポジットフィルムとなる塗工膜が基体上に形成される。尚、ディスペンサーを移動させるかわりに、基体を軸方向に移動させても良い。
塗工膜の厚さは、製造するナノコンポジットフィルムの厚みに大きく影響する。塗工膜の厚さは、基体の回転速度とディスペンサーの移動速度の組み合わせ設定によって調整される。この時、基体の周面に隙間無く塗工液が塗工されるように両者の設定を組み合わせる。
乾燥/焼成時の加熱温度は、ナノコンポジットフィルムの構成材料や製法、更には製造時に用いる溶剤や前駆体の種類等によって適宜選択される。例えば、ナノコンポジットフィルムの基材をポリイミド樹脂とする場合には、前駆体としてポリアミック酸(ポリイミドの前駆体)を用いる。即ち、SP処理CNFを均一分散したポリアミック酸のNMP塗工液を基体上に塗工して、塗工膜を得る。その後、NMPの沸点以下の温度で前記塗工膜を乾燥させ(即ち、NMPを蒸発させる)、更に段階的に昇温を繰り返し、最終的には350℃の加熱下でポリアミック酸のイミド化を終了させる。




実施例

(SP処理CNFの製造例)

(SP処理CNTの製造例−1)
p−アミノベンジルアルコールのメタノール溶液(0.25mol/L)300mLに、CNFとして多層カーボンナノチューブ(MWCNT)「CNT−1(長さL=10μm、直径D=9.5nm、D/G面積比=1.35)」1.5gを投入後、ホモジナイザーを用いて分散し、「事前分散液−1」を調製した。
次いで、タングステン製の太さ2mmの電極を1mmの間隔で対向させた反応容器を用い、上記「事前分散液−1」にSP処理を30分間施し、「SP処理物−1」とした。
尚、SP処理に際しては、上記事前分散液を撹拌しながら、バイポーラパルス電源(栗田製作所社製)を用いて、上記事前分散液中の上記タングステン電極間に、電圧1.6kV、周波数20kHz,パルス幅2μ秒のパルス電圧を印加し、上記「事前分散液−1」中でプラズマを発生させ、「CNT−1」にSP処理を施した。
得られた「SP処理物−1」から固形分を濾別し、得られた固形分をメタノールで洗浄した後、乾燥させ、「SP処理CNT−1」とした。
得られた「SP処理CNT−1」の形状は、長さLが10μm、直径Dが9.5nmで、アスペクト比L/Dが1053であった。更に、「SP処理CNT−1」の表面状態をX線光電子分光(XPS)とラマン分光により分析したところ、SP処理前の「CNT−1」と比較して、新たにC−N結合の生成が確認されると共に、D/G面積比が1.81に増加していることを確認した。

(SP処理CNTの製造例−2)

p−アミノベンジルアルコールのNMP溶液(0.1mol/L)200mLに、CNFとして、上記「SP処理CNTの製造例−1」で用いた多層カーボンナノチューブ「CNT−1」1.0gを投入後、超高圧微粒化装置「ナノヴェイアTM」を用いて分散し、「事前分散液−2」を調製した。
尚、「ナノヴェイアTM」の運転時には、熱交換器を接続したストレート型のノズルを用い、処理圧力が10MPaとなるように調整後、同様の処理操作を5回(5パス)繰り返した。
次いで、得られた「事前分散液−2」に、上記「SP処理CNTの製造例−1」と同様にしてSP処理を施し、「SP処理物−2」とした。
得られた「SP処理物−2」の一部分をサンプリングし、固形分を濾別/洗浄し、「SP処理CNT−2」とした後、得られた「SP処理CNT−2」の形状を観察したところ、長さLが10μm、直径Dが9.5nmで、アスペクト比L/Dが1053であった。更に、「SP処理CNT−2」の表面状態をX線光電子分光(XPS)とラマン分光により分析したところ、SP処理前と比較して、新たにC−N結合の生成が確認されると共に、D/G面積比が1.85に増加していることを確認した。

(SP処理CNTの製造例−3〜7)

CNFの種類を変更すると共に、SP処理時に用いる溶剤、有機材料及びその濃度を変更する以外は、上記「SP処理CNTの製造例−1」と同様にして、「SP処理CNT−3〜7」を得た。
用いたCNFの内容、SP処理の条件及び得られた「SP処理CNT−3〜7」の詳細を「表1」にまとめた。

(ストリーマ処理CNT(比較用)の製造例)

上記「SP処理CNTの製造例−5」と同様にして、「事前分散液−8」を調製した。次いで、「SP処理CNTの製造例−1」で用いた反応容器のタングステン製の電極の一方をステンレス製の円板電極(直径10mm)に変更し、10mmの間隔で対向させた。上記反応容器内に「事前分散液−8」を投入した後、反応容器の電極間に、電圧40kV、周波数50Hz、パルス幅350n秒の高圧パルス電圧を印加し、上記「事前分散液−8」中でプラズマを発生させ、「CNT−4」にストリーマ処理を30分間施し、「ストリーマ処理物」とした。
得られた「ストリーマ処理物」から固形分を濾別し、得られた固形分をメタノールで洗浄した後、乾燥させ、「ストリーマ処理CNT(比較用)」とした。得られた「ストリーマ処理CNT」の形状は、長さLが2.5μm、直径Dが1.7nmで、アスペクト比L/Dが1471であった。更に、「ストリーマ処理CNT」の表面状態をX線光電子分光法(XPS法)とラマン分光法により分析したところ、ストリーマ処理前と比較して、新たにC−N結合の生成が確認されると共に、D/G面積比が0.40に増加していることを確認した。「ストリーマ処理CNT(比較用)」の詳細も「表1」に示す。

表1>

(CNFを含有するナノコンポジットフィルムの製造例)

(SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−1)

ホモジナイザーを用い、上記で得られた「SP処理CNT−1」100mgをNMP30mL中に再分散させ、「SP処理CNT分散液−1」とした後、更に、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)のNMPワニス「Uイミド(登録商標)ワニスAR(ユニチカ社製、固形分濃度;18質量%、出発原材料;PMDA/ODA)」10gを追加添加し、再度、分散させることでフィルム作成用の「塗工液−1」を得た。
上記で得られた「塗工液−1]を、バーコーターを用いてガラス板上に塗工し、「SP処理CNT−1」を含有する均一な塗工膜を得た。
ガラス板上の塗工膜には、ユニチカ社の技術資料「ユニチポリイミドコーティング剤 Uイミド(登録商標)ワニス」を参照し、「80℃で30分間→120℃に昇温して30分間→200℃に昇温して30分間→350℃に昇温して30分間」の順に加熱/焼成処理を施し、乾燥とイミド化処理を行った。室温まで徐冷後、ガラス板ごと水に浸し、ガラス板上から焼成したポリイミドフィルムを剥離/回収し、これを乾燥させて「SP処理CNTを含有するPIフィルム−1」とした。また、「SP処理CNTを含有するPIフィルム−1」の製造時に与えた最大加熱温度は350℃であった。
得られた「SP処理CNTを含有するPIフィルム−1」は、膜厚Tが60μmであり、T/Lは6.0と算定された。また、「SP処理CNTを含有するPIフィルム−1」を400℃(最大加熱温度350℃に50℃を加えた温度)で10分間、加熱した際に発生した低分子量化合物は7.1μg/gであった。

(SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−2)

上記「SP処理CNTの製造例−2」で得られた「SP処理物−2」にNMP100mLを加えて濃度調整した後、更に、上記「「Uイミド(登録商標)ワニスAR」100gを加えて、再度、「ナノヴェイアTM」を用いて分散し、「塗工液−2」とした。
上記で得られた「塗工液−2]を、上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−1」と同様にして、ガラス板上に「SP処理CNT−2」を含有する均一な塗工膜を得た後、「SP処理CNTを含有するPIフィルム−2」とした。
「塗工液−2」は、「SP処理CNT−2」を固液分離することなく製造することが出来たので、大幅に製造工程を短縮(濾過/乾燥/再分散工程の省略)することが出来た。

(SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−2)

 上記「SP処理CNTの製造例−2」で得られた「SP処理物−2」にNMP100mLを加えて濃度調整した後、更に、上記「「Uイミド(登録商標)ワニスAR」100gを加えて、再度、「ナノヴェイアTM」を用いて分散し、「塗工液−2」とした。
上記で得られた「塗工液−2]を、上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−1」と同様にして、ガラス板上に「SP処理CNT−2」を含有する均一な塗工膜を得た後、「SP処理CNTを含有するPIフィルム−2」とした。
「塗工液−2」は、「SP処理CNT−2」を固液分離することなく製造することが出来たので、大幅に製造工程を短縮(濾過/乾燥/再分散工程の省略)することが出来た。

(SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−3〜7)

 上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−1」の製造条件を変更して、「SP処理CNTを含有するPIフィルム−3〜7」を製造した。内容の詳細を「表2」にまとめて記載する。

(CNTを含有する比較用PIフィルムの製造例−1)

「SP処理CNT−1」に換えてSP処理を施していない「CNT−1」を用いる以外は、上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−1」と同様にして「CNTを含有する比較用PIフィルム−1」を製造した。内容の詳細を「表2」にまとめて記載する。尚、「CNT−1」をNMP中に分散させた際、分散液が高粘度化し、製造に支障を生じた。

(CNTを含有する比較用PIフィルムの製造例−2)

 「SP処理CNT−6」に換えてSP処理を施していない「CNT−5」を用いる以外は、上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−6」と同様にして製造を行った。ただし、「CNT−5」をNMP中に分散させた際、分散液が高粘度化した為、所定の添加量を投入することが出来なかった。そこで、「CNT−5」の添加量を減量して「CNTを含有する比較用PIフィルム−2」を製造した。内容の詳細を「表2」にまとめて記載する。

(CNTを含有する比較用PIフィルムの製造例−3〜4)

 「SP処理CNT−7」に換えてSP処理を施していない「CNT−6」を用い、CNFの種類と添加量及び製造条件の一部を変更する以外は、上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−7」と同様にして「CNTを含有する比較用PIフィルム−3」を製造した。また、「SP処理CNT−7」に換えてストリーマ処理を施した「ストリーマ処理CNT」を用い、CNFの種類と添加量及び製造条件の一部を変更する以外は、上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−7」と同様にして「CNTを含有する比較用PIフィルム−4」を製造した。内容の詳細を「表2」にまとめて記載する。

表2



ナノコンポジットフィルムの性能評価

実施例−1

 上記で得られた「SP処理CNTを含有するPIフィルム−1」を、下記の評価項目及び評価基準に従って評価した。その結果、極めて優れた熱特性を有すると共に、引張強度や耐屈曲性に優れたフィルムであることが判明した。また、非常に良好な発熱特性も有し、面状発熱体としての能力が高いことも確認された。結果の詳細を「表3」にまとめて記載する。

(1.熱伝導率)
測定には、温度波熱分析法による熱拡散率・熱伝導率測定装置「ai−Phase Mobile 1u(アイフェイズ社製)」を用い、23℃/50%RHの試験環境下で、試験フィルムの厚み方向の熱拡散率αの計測を行い、得られた熱拡散率に、試験フィルムの比熱容量と密度を乗じて熱伝導率λ(W/m・K)を算出し、以下の基準に従って評価した。
A; 1.0≦λ (非常に良好)
B; 0.7≦λ<1.0 (良好である)
C; 0.5≦λ<0.7 (本発明において許容レベルである)
D; λ<0.5 (本発明において不可レベルである)
(2.引張強度)
試験フィルムから長方形の小片(寸法;15mm × 50mm)を切り出し、前記小片の両短辺に滑り止め用の厚紙を接着剤で貼り付けたものを試験片とした。測定には、テンシロン万能試験機「RTC−1310A(エー・アンド・デイ社製)」を用い、前記試験片の厚紙部分をチャックで掴むと共に、チャック間距離が20mmとなるように試験片を固定し、23℃/50%RHの試験環境下で、5mm/分の引張速度で前記試験片を引き延ばした際の引張破断応力σB(MPa)を計測し、以下の基準に従って評価した。
A; 180≦σB (非常に良好)
B; 140≦σB<180 (良好である)
C; 100≦σB<140 (本発明において許容レベルである)
D; σB<100 (本発明において不可レベルである)
(3.耐屈曲性)
試験フィルムから切り出した短冊状の小片(寸法;10mm × 100mm)を試験片とした。測定には、MIT耐折疲労試験機「形式DA(東洋精機製作所社製)」を用い、「JIS P 8115」の手順を参考にして、23℃/50%RHの試験環境下、荷重;500gf、折り曲げ角度;135°、折り曲げ面の半径;2mm、試験速度;175回/分の試験条件で折り曲げ試験を行い、往復折り曲げ回数が10000回に達した時点で停止し、試験前の試験片の抵抗に対する試験後の試験片の抵抗の変化量の割合α(%)を求め、以下の基準に従って評価した。
A; 0≦α<3 (非常に良好)
B; 3≦α<5 (良好である)
C; 5≦α<10 (本発明において許容レベルである)
D; 10≦α (断裂した場合も含み、本発明において不可レベルである)
(4.昇温特性)
試験フィルムから切り出した短冊状の小片(寸法;30mm × 70mm)を試験片とした。試験片の両短辺に給電用の端子を取り付け、直接給電することで試験片が自己発熱出来るように設定した。100v印加時に140℃に到達するのに要する時間を計測し、以下の基準に従って評価した。尚、温度測定には、レーザ付き放射温度計「AD−5611A(エー・アンド・デイ社製)」を用いた。
A; T<5 (非常に良好)
B; 5≦T<7 (良好である)
C; 7≦T<10 (本発明において許容レベルである)
D; 10≦T (本発明において不可レベルである)
(5.面内発熱温度分布特性)
上記と同様にして試験片を準備し、試験片の中央部の表面温度が180℃になるように発熱させた時、中央部周辺の温度分布を計測し、中央部分との最大温度差ΔTmax(℃)を求め、以下の基準に従って評価した。尚、温度分布の計測には、赤外線サーモグラフィ「TH9100PMV(日本アビオニクス社製)」を用いた。
A; |ΔTmax|<3 (非常に良好)
B; 3≦|ΔTmax|<5 (良好である)
C; 5≦|ΔTmax|<7 (本発明において許容レベルである)
D; 7≦|ΔTmax| (本発明において不可レベルである)

実施例−2

上記で得られた「SP処理CNTを含有するPIフィルム−2」を、上記「実施例−1」と同様に評価した。その結果、「SP処理CNTを含有するPIフィルム−1」と同様に、優れた特性を有していることが確認された。結果の詳細を「表3」にまとめて記載する。
更に、上記「SP処理CNTを含有するPIフィルム−2」に含有される「SP処理CNT−2」は、NMP中で直接、SP処理を施されているので、p−アミノベンジルアルコールの使用量を大幅に減じることが可能となると共に、濾過/乾燥/再分散工程を省略しても、非常に良好なフィルムが製造出来ることが確認された。

実施例−3〜7

上記で得られた「SP処理CNTを含有するPIフィルム−3〜7」を、上記「実施例−1」と同様に評価した。その結果、得られたフィルムは、何れも良好な特性を有していることが確認された。結果の詳細を「表3」にまとめて記載する。
(比較例−1〜4)
上記で得られた「CNTを含有する比較用PIフィルム−1〜4」を、上記「実施例−1」と同様に評価した。その結果、得られたフィルムは何れも、十分な特性を有していないことが確認された。結果の詳細を「表3」にまとめて記載する。
【表3】

表3



実施例−8

上記「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−1」で得られた「塗工液−1」をスパイラル塗布することにより、ガラス製の円筒(直径30mm)の外周面上に塗工膜を形成した。次いで、前記のガラス製の円筒を低速で回転させながら、「SP処理CNTを含有するPIフィルムの製造例−1」と同様の条件で加熱/焼成処理を施し、乾燥とイミド化処理を行った。室温まで徐冷後、ガラス製の円筒ごと水に浸し、円筒の外周面上から焼成したポリイミドフィルムを剥離/回収し、これを乾燥させて、内部に「SP処理CNT−1(長さL=10μm)」を5.3質量%含有する「SP処理CNTを含有するPIチューブ」(以下、単に「PIチューブ」と称す)を得た。
得られた「PIチューブ」は、厚みTが100μmで、T/Lは10と算出された。また、一部を切り出し、400℃で10分間、加熱した際に発生する低分子量化合物は7.0μg/gであり、「実施例−1」と同様に性能評価を実施したところ、何れの項目においても非常に良好な結果が再現された。
次いで、上記「PIチューブ」をフィルム式定着器30(図2)に搭載し、回転可能とした。尚、フィルム式定着器30は、PIチューブ31、ガラスヒータ32と、温度制御部33と、押圧部材34と、加圧ローラ50と、回転制御部51とを備える。PIチューブ31は、実施例−8で用意されたものであり、矢印R1方向に回転可能となっている。PIチューブ31の周面は、押圧部材34によって加圧ローラ50に押し付けられる。また、PIチューブ31は、通紙時には紙40に押し付けられる。
ガラスヒータ32は、PIチューブ31内に設けられており、下端部がPIチューブ31に接している。ガラスヒータ32は、温度制御部33による制御により、PIチューブ31を加熱する。温度制御部33は、ガラスヒータ32を加熱するとともに、ガラスヒータ32の温度を制御する。押圧部材34は、PIチューブ31を加圧ローラ50又は紙40に押し付ける。
加圧ローラ50は、駆動ローラを兼ねており、回転制御部51による制御により矢印R2方向に回転する。また、加圧ローラ50の周面は、PIチューブ31の周面に接している。加圧ローラ50は、通紙時には、紙40に接する。即ち、フィルム式定着器30では、紙40は、PIチューブ31と加圧ローラ50によって挟まれる。回転制御部51は、加圧ローラ50の回転を制御する。このようなフィルム式定着器30では、PIチューブ31は、加圧ローラ50の回転に従動して回転する。また、未定着トナーT1が付着した紙40は、PIチューブ31と加圧ローラ50との間に導入される。一方、PIチューブ31は、ガラスヒータ32によって加熱されるとともに、押圧部材34によって紙40に押し付けられる。これにより、未定着トナーT1が紙40に定着する。即ち、未定着トナーT1が定着トナーT2となる。そして、PIチューブ31及び加圧ローラが矢印R1、R2方向に回転することで、紙40は矢印A方向に搬送される。これにより、紙40に未定着トナーT1が順次定着される。
上記フィルム式定着器30では、PIチューブ31の内部に配したガラスヒータ32により、PIチューブ31の内面が160℃となるように設定し、フィルム式定着器の加圧ローラを回転駆動させた。この結果、PIチューブ31も加圧ローラ50の回転に従動して、しなやかに回転した。また、駆動開始直後から、PIチューブ31の外周面の温度が一様に160℃に達し、ガラスヒータ32からの伝熱損失が軽微であることを確認した。更に、未定着のトナーT1を載せた紙40を通紙させたところ、良好な定着性能を示した。

実施例−9

 前記「実施例−8」で用いたPIチューブ31を搭載したフィルム式定着器30のガラスヒータ32部分を、前記PIチューブ31に給電するための給電端子兼押圧部材に交換し、自己発熱可能なフィルム式定着器に改造した。PIチューブ31の外周面の温度が160℃となるように給電条件を調整し、フィルム式定着器を駆動させたところ、駆動開始直後から、PIチューブ31の外周面の温度が一様に160℃に達した。更に、未定着のトナーT1を載せた紙を通紙させたところ、良好な定着性能を示した。
【 このように、本実施例によれば、ナノコンポジットフィルム1のT/Lと低分子量化合物の発生量を所定の範囲内の値とすることで、ナノコンポジットフィルム1の熱伝導性、電気伝導性及び機械的特性を高度に改善すると共に、優れた自己発熱特性をナノコンポジットフィルム1に付与することが出来ることが明らかとなった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。




脚注及び関連項目







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