54 電気工学スマートグリッド

スマートグリッドの目的とは

  スマートグリッドが目指すところは、電力系統を流れる電気エネルギー全体の利用効率を大きく上げ、発電所で使われる化石燃料の消費を引き下げることです。そのためにます、個々の住宅やビルに電気の使用をできるだけ効率化するシステムを導入します。双方向通信機能をもつたスマートメーターを設置し、電気の消費をリアルタイムで計測したデータを電力供給事業者に通信で送るのです。データを受けた電力供給事業者は信号を送り返し、個別の電力消費を抑制するなどの制御を行います。
  送配電系統の側では、地球温暖化防止の切り札である風力発電や太陽光発電をできるだけ多く接続して受け入れます。自然エネルギーを使つた発電は出力が不安定なので、新しい系統制御方式の導入が必須です。
  そして、需要の制御や系統の制御を情章R通信技術により相互に連係し、発電から消費までの全体システムが最大効率になるように運用するのです。
  これまで電力事業者|よ、電力系統は制御管理していましたが、需要の制御を個別に行うことはありませんでした。スマートグリッドでは、発電から需要までを情報通信技術によつて包括的に制御します。欧州は地球温暖化ガス排出削減に意欲的な目標を定めていますが、スマートグリッドの実現なしに|よ目標の実現は難しいと考えています。
  なお、日本の場合、一つの電力会社が発電から送配電、消費者への供給まですべてを行つてしヽます。ところが欧米などでは、発電をする事業者、送電をする事業者、送電系統を制御する事業者、電気を供給する事業者が別々になつる場合が多しヽのです。このため本書では、消費者に電気を供給する事業者を「電力会社」といわず「電力供給事業者」と表現しています。詳細は後述します。

米国再生・再投資法の中味

  米国再生・再投資法は、2009年2月17日にオバマ大統領が署名して発効してました。予算は総額3110億ドルで6つの分野に区分されてしいます。エネルギー関係向けによ12%に相当する375億ドルがあてられていて、そのうち300億ドルを超える額がエネルギーインフラに振り向けられています。エネルギー関係以外でこれより大きい額になつているのは、一般のインフラ(ここにもエネルギー分野が入つている)と科学分野に、1,200億ドル、教育と訓練に1059億ドルです。
  エネルギーについてよ、とくに「エネルギー利用効率の向上」「再生可能エネルギーの導入促進Jといつた環境分野に焦点が当てらlています。そのためオバマ政権の政策はグリーン・ニューディールとも呼ばれるようになります。そのためにニューディール」という言葉は、1933年にフフランクリン・D・サレーズベルト大統領が打ち出して成功したニューディール政策に由来しています。
  今回の米国再生再投資法の核となるエネルギー分野への投資の中身を眺めてみましょう。先にエネルギー分野への予算よ375億ドルと述べままいたが他の分野のエネルギーに関係するものも合わせると417億ドル(約3兆7千億円)に上ります。中でも重点的に予算をあてられているのがスマートグリッドで、110億ドルという大きな額になつています。スマートグリッド推進プロジェクトは、ます送配電系統の信頼性を向上させ、効率的に電気を送ることができるように設備を更新増強します。次いで、変動する自然エネルギーの導入を大幅に拡大させると同時に、エネルギー需要!を効率化するためにエネルギー需要自体を制御しようとするものです。このフロジェクトの中によ長期計画の初年度予算となるものも多いのですが、その予算分配分は表でこ覧ください。

世界でプロジエクト進行中

  米国ではスマートグリッドという言葉|よ以前から使われています。エネルギー自立・安全保障法 (Energyindependence and Security Act of 2007)に、もっとも重要な方策の一つとしてスマートグリッドの推進が入つています。この法律は米国全体のエネルギー効率を上げ、再生可能エネルギーを導入することによって、石油輸入を減らし、国内の石炭や天然ガスを長持ちさせて、米国の安全保障レベルを上げようとするエネルギー政策です。EU(欧州連合)を中心に欧州でも、以前から送配電系統の効率化と高度制御に向けたスマートグリッドの実現が検討されています。
  また、送配電網が十分に整備されていない中国を中心にしたアジア諸国、中南米やアフリカ諸国などでも、安定した効率の高い系統の構築に向けて、急速にスマートグリッド導入の気運が高まつています。韓国やシンガポールなどでよ安全保障の一環という意味合いを含めて、スマートグリッドを導入するプロジエクトが始まつています。
  ここで留意すべきことは、国によつてエネルギー事情や発電、送電、配電の伴備の状況が大きく異なるということです。そのためスマートグリッド構築を推進することによつて実現すべき項目の優先度も大きく異なるのです。発送電能力が絶対的に不足する途上国では、新規設備|ますべてスマートグリッドを前提にするでしょうし、先進国ではます電力需要を抑制するところから手をつけるでしょう。
  日本でもスマートグリッドの導入よ検討されていますが、日本は発送配電系統の整備と信頼性は世界一といわれるほどですから、欧米と同じような形の導入は行われないでしょう。当面は建物や家屋内のエネルギー消費の効率化に重点が置かれるのではないでしようか。「日本的スマートグリッド」とよいわれる所以です。

電力供給制御のデジタル化

電気の製造から使うまでを一体制御

  電気は発電所で作られます。発電所で作られた電気を住宅や建物、工場なたにより拒|けるのよ送配電系統です。発電、送電、配電のシステムは、常に需要に即応した供給ができるように中央で制御されています。発電所には火力、水力、原子力などがありますが、需要の変動を過去の経験や季節の変化から予測して、最適な発電所を組み合わせて運転します。工場が急に止まつて消費が減る」「予想以上の暑さで冷房のスイッチが一斉に入る」というような状況になると、このような需要変化は電圧変動や周波数変動という形で検知され、その情報は中央の制御室に送られます。中央の制御室はよ変動が定められた範囲に収まるように発電、送電をコントロールして、電力の需要と供給を一致させます。電気を送配電系統で貯めることはできないので、需給制御は瞬時に行われよす。制御の過程でよ、変電所のスイッチを切り替えたり、変圧器で電圧を調整したり、様々な操作をきわめて短時間の間に行います。こうした制御は物理的な機械操作が多いのですが、これをデジタル技術による操作に切り替えるのがスマートグリッドの重要部分です。
  系統の末端まで多くのセンサーを組み込めば、需要の変動を迅速に把握することができるし、信頼性が向上しエネルギー効率も上るとされています。また、欧米の送配電網は50年前に設置されたままのものも多いため、これを新しいものに取り替えるだけで、送電ロスよ10%下がるといわれます。
   日本は送配電系統のデジタル化が進んでいるために、スマート化の必要度は低いのですが、欧米では送配電制御のデジタル化はスマートグリッドプロジェクトの中核部分です。そして消費者の需要情報を集約することによって、不安定な自然エネルギーによる発電も制御するのが次のステップです。




変動しやすい自然エネルギー大幅導入が本命



スマートメーターの全戸取付け

  個々の住宅や建物、工場でどのように電気が使われているかを短い間隔で測定しなければ、需要のきめ細かい制御|よできません。スマートグリッドでは、従来の電気メーターをすべてスマートメーターに取り替えます。


  電力需要は、季節、昼夜、曜日によって増減します。一週間の間でも日曜日は1場やオフィスが閉まるので需要は大きく下がります。住宅ではクーラーのスイッチを入れた瞬間、電灯が一瞬晴くなることがあります。この現象は、急に電気の使用が増えたために一瞬電圧が下がつたのが、近くの変圧器からiL気が補充されてすぐ元に戻るために起こります。電力全体の需要は絶えす増減しています。大きな変動については、天候などの予測も織り込んで大まかな需要予測をしていますし、短時間の変動については、発電機の中でも稼働レベルを早く変えることのできるものを利用して対応しています。欧米や日本の場合、大工場などについてはデジタルメーターにより消費状況をオンラインで測定しています。しかし、事務所や住宅などについては、個別の利用状況を捉えること|よしていませんでした。日本の場合、小さい地域単位でもきめ細かく需要状況を把握できていると聞きさますが、欧米の場合は、どこで停電が起きたかもすぐにはわからないような大まかな管理しかできていないのです。スマートグリッドは系統全体の制御を細かくデジタル化すると同時に需要を個別に管理します。個別管理の仕組みの要がスマートメーターの全戸取付です。米国ではオバマ政権の政策でスマートメーターの設置が急増しています。力ルフォルニア州のエネルギー企業であるPG&SEは、2011年中にすべての電力顧客510万戸、ガス顧客450万戸への取付を完了すると発表しています。欧州でも、EUが2022年までに全戸にスマートメーターを取り付けることを加盟国に義務づけましたし、英国はEUの目標より早い2020年に終了させるという方針を出しています。イタリアではすでに3000万戸すべてに取付が済んでいるそうです。


送配電系統の信頼性・柔軟性の向上




従来の枠を超えた高圧送電線の設置


分散型発電の普及促進



標準・安心なくして普及なし


  電気が作られ、送られ、消費されるまでの過程で多種多様な情報データが生まれ、それが通信網でやりとりされます。データの悪用や外部からの侵入などが起きないよう、厳重なセキュリティー・システムが必要です。









電気だけでないスマートメータ

エネルギー計量のスマート化

  スマートメーターは電気に限定されるものではありません。都市ガス、LPG、水道の消費状況をスマートメーターによつて詳細に知ることができれば、それらの消費を節減できるのは確実でしょう。ガスはエネルギーそのものですし、水の浄化や配水には多くのエネルギーが使われています。エネルギー消費の効率化はここでも実現できるのです。ガスや水道は電気と違つて貯蔵ができますし、時間帯によって料金単価が変わることもないので、メーターのスマート化|よ主として自動検針による検針コスト削減が目的です。欧米や日本で|よ、双方向通信機能をもつガスの超音波流重計の取付が始まっています。主目的は自動検針ですが、組み込まれた通信機能を利用してさまざまなサービス事業も行われるでしょう。
  日本の都市ガスメーターに|よ、地震がある強さを超えると自動的にガスの供給を遮断する機能があります。また、常に流量を測定して、ガス漏れの可能性があれば遮断し、ガス会社に知らせる通信機能をもつものもあります。都市ガス会社の一部では、この通信機能を利用して建物のセキュリティー事業を行っています。電気、ガス、水道のメーターがそれぞれ通信機能をもつのはムダな話です。通信機能どれかに集約して、共同利用しようという方向に世界は動いていて、 欧米で|よ電力とガスの供給を一つの事業が行つていることも多いですから、集約するのは当然ともいえます。地元に水資源が少ない米国カリフォルニア州は、遠方の水源からの水を圧送する電力が膨大になるため、電力が膨大になるため水の節約に力を入れています。将来は電カピーク時の水道料金を上げるような施策が行われるかもしれません。カリフォルエアでスマート水道メーターを取り付ける方向に向かっています。













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