SUN ROADBIO MASS TAR FREE

タールフリー技術研究T:間伐材や廃材から無駄なく水素を取り出す

 環境負荷の小さいエネルギー源として、バイオマスが注目されている。バイオマスとは、化石資源を除いた生物資源、例えば木材、紙、農業残渣、屎尿、食品廃棄物等の有機物。バイオマスから得られるエネルギーは、再生可能エネルギの1つであり、バイオマスマスエネルギーと呼ばれる。再生可能エネルギーとは、地球規模で、生物による二酸化炭素の吸収量と、その生物に由来するバイオマスを燃焼させた場合に発生する二酸化炭素の排出量とが同量で相殺するため、大気中二酸化炭素濃度が変化しない。例えばガス化発電装置を用いて利用するという技術だ。ガス化発電装置は、ガス化装置及び発電機を備える。

作成日:|改訂日:2015.01.15

表1 木質バイオマス発電関連特許 
公開番号名称出願者
特開2009-298967ガス化方法、及びガス化装置 バイオコーク技研株式会社
特開2010-106146 バイオマス液化物回収装置および回収方法 JFEエンジニアリング株式会社
特開2010-077410 バイオマス由来液体燃料の製造方法及びその装置 三井造船株式会社 他
特開2010-017701 タール含有ガスの改質方法 新日本製鐵株式会社
特開2008-27412 炭素質原料のガス化方法新 新日本製鐵株式会社
特開2010-091198 木質タールの燃料処理装置および方法 前田道路株式会社 他
特開2009-263428 燃料ガス生成装置 有限会社東根製作所 他
特開2008-297509 タール改質反応器 三井造船株式会社 他
特開2001-020750 木質ガスを利用した発電方法及びその装置 フォーレストエンジニアリング株式会社
特開 2004-067900 木材チップの燃焼ガス化方法及び装置 木質バイオマスエネルギー技術研究組合
特開2005-089519 木質系バイオマスガス化におけるタール除去方法と装置 島根電工株式会社
特開2005-162811 固体有機物のガス化装置 独立行政法人科学技術振興機構 他
特開2015-004021 熱分解ガス化炉、触媒改質方法、エネルギー供給システム、および電熱供給システム 有限会社市川事務所 他



  ガス化装置は バイオマスを400℃以上の高温で熱分解することで可燃性のガスを発生させ、発電機は熱分解で発生したガスを燃料として発電を行うが、バイオマスをガス化する時、木炭と、一酸化炭素、メタン、エタン等の可燃性ガスと共にタールも発生する。発生したタールは、熱分解時においては気化するが、発電機に送出されて温度が低下した場合、装置に凝着し故障原因となる。どうすれば、間伐材や廃材から原料の無駄なく水素を取り出すことができるのか、この命題の解答が「バイオコール」だというのが、表1の特開2009-298967「ガス化方法、及びガス化 装置」(バイオコーク技研株式会社)で、これによれば酸化アルミニウムや酸化鉄で木質バイオを熱分解すれば、タールフリーで低コスト化が図れるという。



酸化アルミニウムや酸化鉄などで改質しタール除去する方法

  複雑になるがその心臓部の改質工程の反応式(500℃以上の温度下で接触した場合)を以下に掲載する。

 (1) 3Fe2 O3 +CO = 2Fe3O4+CO2
 (2) 3Fe2 O3 +H2= 2Fe3O4 +H2 O
 (3) 3Fe2 O3 +タール = 2Fe3O4 +(CO、CO2 、H2O)
 (4) 3Fe2 O3 +炭化水素= 2Fe3O4 +(CO、CO2 、H2O)
 (5) nFe+nH2 O=nFeO+nH2               
 (6) CnHm +nFeO=nCO+(m/2)H2  

つまりは、(1)バイオマス(有機物)と木炭(炭状固体)を550℃以上で、熱分解しタール含有ガスと水蒸気に変換した後、(2)酸化鉄(ヘマタイト)を加え、600〜900℃で改質したの後、タールフリー燃料ガスと還元鉄を取り出す。(4)取り出した還元鉄は水和酸化鉄とし酸化鉄(ヘマタイト)にして再使用するというものだ。申し分ないようなプロセスがここには記載されている。


図1 ガス化方法の概説


1 ガス化装置、 11 熱分解反応器、 12 燃焼加熱炉、 13 搬送スクリュー、 14 ホッパ、 15 配管、 16 木炭回収器、 17 ガス改質反応器、 18 ホッパ、  21 気固分離器、 23 還元鉄回収器、 24、25、26 配管

図2 ガス化装置構成図

【解説】
・ガス化装置1は、バイオマスを、可燃性のタール含有ガス、水蒸気及び木炭に熱分解する熱分解反応器11と、タール含有ガスをタール非含有ガスに改質すると共に、還元鉄Feを併産するガス改質反応器17を備える。

・熱分解反応器11は、中空円筒状をなし、該熱分解反応器11を400〜600℃に加熱する外部熱風加熱槽方式の燃焼加熱炉12の内部に略水平の姿勢で設置されている。熱分解反応器11の一端部に設けられたバイオマス供給口11aには管内にバイオマスを供給するホッパ14が結合され、熱分解反応器11の内部には、ホッパ14及びバイオマス供給口11aから供給されたバイオマスを他端部側へ搬送する搬送スクリュー13が設けられている。熱分解反応器11は、他端部に木炭排出口11b及び排気口11cを有する。排気口11cには、バイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガス及び水蒸気をガス改質反応器17へ導く配管15が接続され、木炭排出口11bには、残渣である木炭を回収する木炭回収器16とが設けられている。

・ガス改質反応器17は、縦長円筒状をなし、該ガス改質反応器17を600〜900℃に加熱する燃焼加熱炉12の内部に配置されている。ガス改質反応器17は,ヘマタイトFe2 O3 粒子の移動層、又は流動層を形成する。ガス改質反応器17の上部に形成された低品位鉄鉱石投入口17bには、例えば、粒状の低品位鉄鉱石をガス改質反応器17に供給するホッパ18がロータリーバルブ19を介して設けられている。ガス改質反応器17は、上端側部にガス流入口17aを有し、ガス流入口17aには、熱分解反応器11に連通する配管15が接続されており、バイオマスの熱分解によって発生したタール含有ガス及び水蒸気がガス改質反応器17へ流入し、低品位鉄鉱石の集積物中を通流するように構成されている。600〜800℃の温度でタール含有ガス及び水蒸気と、低品位鉄鉱石とが並流した場合、タールが除去されたタール非含有ガス及び還元鉄Feが併産される。

・ガス改質反応器17は、下端部に、還元鉄Fe及びタール非含有ガスを排出する還元鉄排出口17cを有する。還元鉄排出口17cには、ロータリーバルブ20、気固分離器21及びロータリーバルブ22を介して還元鉄Feを回収する還元鉄回収器23が設けられている。気固分離器21のタール非含有ガス排気側は、配管24に通じており、タール非含有ガスが回収される。また、配管24は途中で配管26に分岐している。配管26は、空気を燃焼加熱炉12に供給する配管25に接続しており、タール非含有ガス及び空気の混合ガスが燃焼加熱炉12に供給されるように構成されている。

・燃焼加熱炉12は、タール非含有ガスを燃焼させることによって、ガス改質反応器17及び熱分解反応器11を多段的に加熱する。より詳細には、タール非含有ガスを燃焼させることによって、まず改質反応器を600〜900℃の温度範囲で加熱する。改質反応器の周囲を通流して温度が低下した燃焼ガスは、改質反応器から熱分解反応器11へ送られ、熱分解反応器11を400〜600℃で加熱する。熱分解反応器11の周囲を通流して更に温度が低下した燃焼ガスは、バイオマスの乾燥、低品位鉄鉱石の脱水に多段利用される。

  ・図3は、ガス化装置1の実施態様の一例を示す説明図である。本発明に係るガス化装置1は、例えば木質資源の豊富な林業地域に設けられる。安価な低品位鉄鉱石を前記林業地域へ輸送し、該低品位鉄鉱石及び豊富なバイオマスから、ガス化装置1を用いて、木炭、タール非含有ガス、及び還元鉄
Feを併産する。そして、木炭、タール非含有ガス、及び還元鉄Feを需要地域へ輸送する。需要地域では、小規模コジェネレーションシステムによって、木炭、タール非含有ガスのエネルギーを電力、熱、鉄源として利用する。

図3 ガス化装置の実施態様の一例を示す説明図

・実験装置としてのガス化装置1は、熱分解反応器11を550℃に加熱する電気炉31を備える。熱分解反応器11の内径は55mm、長手方向における有効加熱長さは200mmである。また、熱分解反応器11の有効加熱区間における、バイオマス(10×10×2mmの木質チップ)の滞留時間は47秒である。 なお、電気炉31で加熱可能な最高温度は700℃であり、熱分解反応器11における前記滞留時間は、20〜240秒の間で調整することが可能である。 また、実験装置としてのガス化装置1は、配管15を500℃に加熱する電気ヒータ(マントルヒータ)32を備える。配管15の内径は50mm、全長は600mmである。さらに、実験装置としてのガス化装置1は、ガス改質反応器17を650〜800℃に加熱する電気炉33を備える。ガス改質反応器17の内径は60mm、長手方向における有効加熱長さ200mmである。

図4 ガス改質反応の実験に用いた実験装置

・加熱脱水処理されたメソ多孔質のヘマタイトFe23 をガス改質反応器17に948g充填し、ヘマタイトFe23 を650〜800℃の温度範囲で加熱すると共に、バイオマスを、4.3g/分の供給速度で390分供給した(総量1677g)。なお、温度範囲に650℃〜800℃の幅があるのは、電気炉加熱の特性から生じる不可避的な温度分布であり、上流側の最高温度が800℃、下流側で650〜700℃の温度分布が生じていた。

・図5は、低品位鉄鉱石の充填層における各種生成物の収率分布を概念的に示す説明図である。左図は、タール含有ガス通流前における低品位鉄鉱石の充填層の状態を示しており、右図は、タール含有ガス通流後の充填層の状態を示している。本実験では、低品位鉄鉱石の充填層を、タール含有ガスの通流方向、上流側から下流側へ向かって、第1層〜第5層に等分割し、各層における生成物の分析を行った。タール含有ガス通流前における各層の主成分はヘマタイトFe23 である。タール含有ガス通流後における第1層及び第2層には、ウスタイトFeO、還元鉄Fe、炭素Cが分布している。第3及び第4層には、主に還元鉄Feが分布しており、炭素Cがわずかに存在している。第5層には、主に還元鉄Feが分布しており、ウスタイトFeO、炭素Cは見られない。

・実験結果から、上流側の第1及び第2層では、炭素析出、上記化学反応式(1)〜(6)の酸化還元反応がすべて起こっており、正味として,徐々にウスタイトFeOの還元が進行すると予想される。一方、下流側の第5層では、Feを酸化するのに十分な分圧の水蒸気、二酸化炭素が存在せず、水素やCOといった炭素を析出しない還元性ガスが高い分圧で存在するため、ウスタイトFeOの還元が十分に進行し、還元鉄Feが生成していると予想される。 従って、低品位鉄鉱石と、タール含有ガスとを並流させることによって、充填層の下流側から、還元鉄Feを回収する。

表2 熱分解及び改質反応で生成した成分の収率及び液成分表

・表2は、熱分解及び改質反応によって生成した各種成分の収率、及び液成分の詳細を示す図表である。表2(a)は、熱分解及び改質反応によって生成した各種成分の収率を示している。特に「550℃熱分解」列は、熱分解によって得られる各種成分の収率、「熱分解+改質」列は、熱分解及び改質反応によって得られる各種成分の収率を示している。表2(b)は、液成分に含まれる成分の詳細を示している。 表2(a),(b)から分かるように、改質後のガスは、水素、一酸化炭素、メタンCH4 を主成分としており、液成分、特に問題となるタールの重量%は、18.8%からわずか0.002%にまで分解されている。尚、金属酸化物として、酸化鉄で説明したが、Ti,Mn,Ni,W,V,Moの酸化物を用いて、実施の形態と同様のガス化方法及びガス化装置を実施しても良い。
【注釈】タール成分が0.002%、99.99%除去されたとはいえ長期的な使用による故障率が皆無とは言い切れない不安が残り今後の実用実績が問われる。

図6  「山の幸・海の幸」プロジェクト全体図

※バイオコール技研株式会社は「山の幸・海の幸」と名づけたプロジェクト」という水素循環社会構想を描いている。


【特許請求の範囲】

【請求項1】  有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガス、水蒸気及び炭状固体に熱分解するガス化方法において、熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収工程と、熱分解によって発生したタール含有ガス及び水蒸気を、所定温度範囲で金属酸化物に接触させることによって、タール非含有ガス及び前記金属酸化物の還元物を併産する酸化還元工程と、併産されたタール非含有ガス及び前記還元物を回収する回収工程とを有することを特徴とするガス化方法。
【請求項2】  前記金属酸化物は多孔質の酸化鉄を含み、前記所定温度範囲は、575〜1375℃であることを特徴とする請求項1に記載のガス化方法。
【請求項3】  前記金属酸化物は多孔質の酸化鉄を含み、 前記所定温度範囲は、600〜900℃である ことを特徴とする請求項1に記載のガス化方法。
【請求項4】  結合水を含有する金属酸化物を加熱し、結合水を水蒸気として脱水させることによって、多孔質の金属酸化物を製造する工程を有する ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のガス化方法。
【請求項5】  前記有機物は、木質のバイオマスである ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のガス化方法。
【請求項6】  前記酸化還元工程は、タール含有ガス、水蒸気及び金属酸化物を並流又は向流させる工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のガス化方法。
【請求項7】  前記酸化還元工程は、タール含有ガス、水蒸気及び金属酸化物の反応系に水蒸気又は空気を導入する工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のガス化方法。
【請求項8】  有機物を加熱することにより、該有機物をタール含有ガス、水蒸気及び炭状固体に熱分解するガス化装置において、熱分解によって生成した炭状固体を回収する炭状固体回収手段と、熱分解によって発生したタール含有ガス及び水蒸気を、所定温度範囲で金属酸化物に接触させることによって、タール非含有ガス及び前記金属酸化物の還元物を併産する酸化還元手段と、併産されたタール非含有ガス及び前記還元物を回収する回収手段とを備えることを特徴とするガス化装置。
【請求項9】  前記酸化還元手段は、 タール含有ガス、水蒸気及び金属酸化物を並流又は向流させる容器と、 該容器を加熱する燃焼加熱炉と を備えることを特徴とする請求項8に記載のガス化装置。
【請求項10】  水蒸気又は空気を前記容器へ投入する投入器を備える ことを特徴とする請求項9に記載のガス化装置。





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